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著作権判例セレクション
【損害額の算定例】法114条2項の適用事例
▶平成30年6月19日東京地方裁判所[平成28(ワ)32742]
(3) 被告絵葉書,被告一筆箋及び被告ハンカチ
ア 著作権114条2項の適用の有無
著作権者に,侵害者による著作権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には,著作権法114条2項の適用が認められると解すべきであり,著作権者と侵害者の販売経路等に相違が存在するなどの諸事情は,推定された損害額を覆滅する事情として考慮されるとするのが相当である(知財高裁平成25年2月1日特別部判決参照)。
証拠によれば,原告らは,訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて,スカーフ,ハンカチ,袱紗,パーティバッグ,小物入れ及び絵葉書を販売していることが認められる。
そうすると,被告絵葉書,被告一筆箋及び被告ハンカチについては,上記原告らの販売商品との代替性が認められ,被告による著作権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものといえるから,著作権法114条2項の適用が認められる。一方で,被告カレンダー,被告クリアファイル,被告わさびチューブ及び被告石鹸については,上記原告らの販売商品とはおよそ異なるものであり,被告による著作権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものとはいえないから,著作権法114条2項の適用は認められない。
イ 推定覆滅事情
被告は,販売ルート,外観の相違から,原告らの商品と被告の商品との間には代替性がなく,被告の得た利益全部について損害の推定が覆滅されると主張する。
そこで検討するに,原告らの商品は,訴外一竹辻が花のウェブサイトにおいて,絵葉書につき500円(8枚又は6枚セット),ハンカチにつき1800円で販売されているのに対し,被告の商品は,一竹美術館のショップにおいて,被告絵葉書につき120円(1枚),被告ハンカチにつき600円,被告一筆箋につき450円で販売されており,顧客層及び販売価格に一定の相違があること,ハンカチについては原告らの商品と被告の商品はデザイン,外観に相当の違いがあると認められること,原告らは一筆箋を販売していないこと,被告の商品は美術館のショップにおいてまさに一竹作品等を観賞した者に対して販売されていることにより,販売態様の異なる原告の商品とは顧客誘引力に違いがあると考えられること,以上の事情を踏まえると,被告絵葉書,被告一筆箋,被告ハンカチの販売により得た利益の30%については,原告らの損害であるとの推定が覆滅するものと認めるのが相当である。
以上を前提に損害額を算定する。
ウ 被告絵葉書
(ア) 逸失利益
前記前提事実のとおり,被告は,平成24年6月から平成28年4月までの間,一竹美術館のショップにおいて,被告絵葉書を販売価格1枚120円で6万8781枚販売した。
被告絵葉書1枚あたりの限界利益は96円である。
そうすると,平成28年4月までの原告Aの逸失利益は,著作権法114条2項に基づき,462万2083円(6万8781枚×96円×0.7)と推定される(推定覆滅後)。
(イ) 購入費用
証拠によれば,原告Aは,被告による侵害行為を特定し,本訴において侵害を立証するために,被告絵葉書1枚を120円で購入し,同額の損害を被ったことが認められる。
(ウ) 合計
以上より,被告による被告絵葉書の販売により,原告Aに462万2203円の損害が発生した。
(以下略)