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著作権判例セレクション
【コンテンツ契約紛争事例】著名ミュージシャンとそのマネジメント会社での専属契約等が問題となった事例
▶平成21年10月22日東京地方裁判所[平成19(ワ)28131]
(注) 本件は,原告らが,被告に対し,原告有限会社ラバーソウルが別紙楽曲目録記載の各楽曲の著作権を有することの確認を求めるとともに,被告との間の契約ないし不当利得返還請求権に基づき,被告に対し,原告らが所定の金員の支払をそれぞれ求めた事案である。
以下の「請求の原因」も参照:
「(3)著作権を有することの確認について
ア 被告は,平成17年1月1日当時,別紙楽曲目録記載の各楽曲(「本件楽曲」)の著作権を有していた。
イ GLAYメンバーらは,被告との間で,平成10年6月1日付け専属契約(「本件専属契約」)を締結した。GLAYメンバーらは,本件専属契約期間中に作詞・作曲を行った本件楽曲について,被告との間で,楽曲ごとに著作権譲渡契約(「本件著作権譲渡契約」)を締結した。本件著作権譲渡契約は,①GLAYメンバーらが,被告に対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡すること,②被告が,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローに対し,社団法人日本音楽著作権協会から被告に支払われる著作権印税のうち,出版社取分3分の1を控除した3分の2(66.6%)を支払うことを内容とする。また,被告とGLAYメンバーらとの間において,著作権印税に関し,実際に作曲した者に16分の5,他のメンバーに16分の1ずつ,実際に作詞した者に16分の5,他のメンバーに16分の1ずつを分配することが合意されていた。
ウ 被告は,平成17年5月から,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローに対する著作権印税の支払を怠るようになり,同年8月31日の時点における未払著作権印税の合計額は以下のとおりであった。
(略)
エ 原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローは,平成17年10月18日,被告に対し,未払著作権印税の支払を催告した。
オ 催告にもかかわらず,被告が未払著作権印税を支払わなかったので,GLAYメンバーらは,平成17年11月9日,被告に対し,履行遅滞により本件著作権譲渡契約を解除する旨の意思表示をした。
GLAYメンバーらは,同月15日,被告に対し,上記解除の通知の記載から漏れていた別紙楽曲目録記載147の楽曲について,本件著作権譲渡契約を解除する旨の意思表示をした(以下,平成17年11月9日の上記解除の意思表示と併せ「本件解除」という。)。
カ 本件解除により,本件楽曲に係る著作権は,各著作権譲渡契約における著作権譲渡人に帰属した。
(略)
キ 原告らと被告との間において,本件楽曲に係る著作権の帰属につき争いがある。本件楽曲に係る著作権については,今後も著作権印税等が発生することが見込まれるから,原告らには,著作権の帰属を確認する利益がある。
(4)未払金の支払請求について
ア 本件専属契約に基づく合意
被告は,GLAYメンバーらとの間で,被告がGLAYメンバーらに対し,月額50万円のマネジメント専属料のほか,以下の報酬を支払うことを内容とする本件専属契約を締結した。なお,本件専属契約は,平成17年5月31日をもって終了した。
(略)
イ 本件著作権譲渡契約に基づく合意
被告は,GLAYメンバーらとの間で,本件著作権譲渡契約を締結し,著作権印税の支払を約した。
ウ 第三者に楽曲の著作権を譲渡した場合の印税の取扱いに関する合意原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローと被告とは,本件専属契約期間中にGLAYメンバーらが作詞・作曲を行い,被告以外の第三者に当該楽曲の著作権を譲渡した場合,当該第三者からGLAYメンバーらに支払われる著作権印税について,被告がいったん受領した上,作曲したメンバーに16分の5,他のメンバーに16分の1ずつ,作詞したメンバーに16分の5,他のメンバーに16分の1ずつ分配することを合意した。
エ 原告エクストリームと被告との間の原盤使用許諾契約
(ア)原告エクストリームは,平成16年1月9日,被告に対し,9億円を貸し付けた。
被告は,同年9月1日,原告エクストリームに対し,上記借入金債務を担保するため,被告が権利を有する下記楽曲の原盤権について,譲渡担保権を設定する旨の合意をした。
(略)
(イ)原告エクストリームは,平成16年9月1日,被告との間で,上記原盤について,被告が原告エクストリームに対し,原盤を使用して複製・頒布されたレコードに関し,売上数量(倉庫出荷量の80%)1枚につき,消費税抜き小売価格からジャケット代(消費税込み定価の15%)を控除した金額の15%相当額の原盤印税を支払うことを内容とする使用許諾契約を締結した(「本件原盤使用許諾契約」)。
オ 原告エクストリームと被告との原盤等権利の譲渡契約
被告は,原告エクストリームに対し,平成17年6月1日をもって,被告が所有する同年3月末日までに制作し,完成されたGLAYの原盤,原版及びこれらに係るすべての権利並びにGLAYに関する商標権,知的財産権及び商品化権を含む一切の権利(以下「本件権利」という。)を譲渡した。
カ 被告は,平成17年2月28日以降,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローに対し,本件専属契約,本件著作権譲渡契約に基づく支払をしない。
平成17年8月31日の時点における被告の上記未払金額は,次のとおりである。
(略)
キ 被告は,平成17年9月1日以降についても,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローに対し,本件専属契約,本件著作権譲渡契約及び第三者に楽曲の著作権を譲渡した場合の印税の取扱いに関する合意に基づく支払をしない。
また,被告は,平成17年6月1日以降も,第三者から本件権利の使用許諾の対価を不当に得たにもかかわらず,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローに対し,不当利得を返還しない。
(以下略)」
1 請求の原因について
(1)請求の原因(1),(2),(3)のうちアないしオ及びキ,並びに(4)のうちアないしオ及びク記載の事実は,当事者間に争いがない。
(2)請求の原因(3)のカ(本件解除後の本件楽曲に係る著作権の帰属)について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件著作権譲渡契約においては,「乙(判決注・被告)がこの契約の条項に違反した場合には,甲(判決注・著作権譲渡人。例えば,甲7では,B)は,20日間の期間を定めた文書により,契約上の義務履行を催告し,その期間内に履行されないときは,この契約を解除すること,・・・ができるものとします。」(甲7の第19条(1)参照),「契約期間の満了または契約の解除によりこの契約が終了した場合には,本件著作権は,当然甲(判決注・著作権譲渡人)に帰属するものとします。」(甲7の第21条参照)との旨が約定されていたこと,本件楽曲の各作詞・作曲者(GLAYメンバーら)は,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク又は原告ストローに対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたこと,原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク及び原告ストローは,平成17年11月7日,原告ラバーソウルに対し,本件楽曲に係る著作権を譲渡する旨の合意をしたことが認められる。
(3)請求の原因(4)のカ(被告の未払金額-その1)について
(略)
(4)請求の原因(4)のキ(被告の未払金額-その2)について
(略)
2 被告の抗弁主張について
(1)弁済の提供(民法492条)について
被告は,平成17年11月7日,5億4429万4332円(1(4)カの(ア)ないし(エ)の合計額)を用意したことを告げた上で,原告らに対し,その受領を催告したとして,これが口頭の提供(民法493条ただし書)に該当する旨主張する。
弁済の提供として,弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告(口頭の提供)をすれば足りるとされるのは,債権者があらかじめその受領を拒み,又は債務の履行について債権者の行為を要するときである(民法493条ただし書)。
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件著作権譲渡契約においては,著作権使用料の支払方法につき,「乙(判決注・被告)は,毎年3・6・9・12月の年4回,各月末日をこの契約に関する会計計算締切日と定め,当日までに前条に定められたところに従って発生した本件著作権の著作権使用料についてこの契約の諸条項に基づいて分配の計算を行い,各締切日後60日以内に計算明細書を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する住所に送付し,著作権使用料を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する銀行口座への振込みをもって支払うものとします。」(甲7の第11条参照)旨約定されていたことが認められるから,本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払債務の履行につき,債権者の行為を要するものであるということはできない。
また,証拠及び弁論の全趣旨によれば,平成17年当時,原告らと被告との間で,「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」における譲渡対象の権利に本件楽曲の著作権が含まれるか否かをめぐって,見解の相違があり,原告らと被告との間で交渉が行われていたこと,この交渉の際,被告側から原告ら側に対し,平成17年11月7日ころ,上記契約の譲渡対象には本件楽曲の著作権は含まれない(すなわち,本件楽曲の著作権が被告に帰属するものである)ことの確認がされることを条件とした上で,本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税等合計5億4429万4332円を速やかに支払う旨の提案がされたことがあったものと認められる。しかしながら,上記提案は,本件著作権譲渡契約とは別個の契約である「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」の解釈をめぐる紛争が解決されることを,一方的に,本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払の前提であるとするものであり,この前提が失当であることは明らかであるから,上記提案をもって,「弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をした」ものと認めることはできない。本件全証拠によっても,原告らにおいて,本件譲渡契約に基づく未払著作権印税の受領をあらかじめ拒絶したとの事実を認めることもできない。
よって,被告の上記主張は理由がない。
(2)解除権の濫用(民法1条3項)について
被告は,原告側は,「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」の第1条の文言が,たまたま,出版権(著作権)をも譲渡の対象とするものであるかのようにも解釈し得るものであることを奇貨として,これが契約当事者間の意思に反することを知りながら,ことさらに,出版権が譲渡対象とされている旨強弁したものであり,このような主張は,原告側において,被告が出版権の譲渡の問題が解決するまで精算金の支払を留保し,結果として債務不履行の状況に陥るであろうことを期待して,あえて行われたものであるから,本件解除は解除権の濫用に当たるものとして許されない旨主張する。
証拠及び弁論の全趣旨によれば,「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」の第1条には,「甲(判決注・被告)は,乙(判決注・原告エクストリーム)に対し,平成17年6月1日(以下「基準日」という)付をもって,甲が所有する同年3月末日までに制作し完成された「GLAY」(以下「本アーティスト」という)の日本を含む全世界における,原盤および原版(以下,併せて「原盤等」という。),本件原盤等に係るすべての権利(複製権,譲渡権,頒布権,上演権,上映権,送信可能化権,著作隣接権,二次使用料請求権,貸与報酬請求権,私的録音録画補償金請求権を含む著作権法上の一切権利,所有権を含む)ならびに,本アーティストに関する商標権,知的財産権,及び商品化権を含む一切の権利(以上について,以下「本件権利」という。)を完全に譲渡し,甲は,本件原盤等の所有権及び本件権利を喪失するものとする。」と記載されていること,平成17年当時,原告らと被告との間で,「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」における譲渡対象の権利に本件楽曲の著作権が含まれるか否かをめぐって,見解の相違があり,原告らと被告との間で交渉が行われていたこと,この交渉の際,被告は,原告らに対し,上記契約の譲渡対象に本件楽曲の著作権は含まれないことの確認がされることを条件として,本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税等を支払う意向であり,原告らに対しても,同旨の提案をしたことがあることが認められる。
しかしながら,本件著作権譲渡契約とは別個の契約である「GLAYに関する原盤等権利の譲渡契約書」の解釈をめぐる紛争が解決されることを,本件著作権譲渡契約に基づく未払著作権印税の支払の前提であるかのように主張したのは被告であって,原告らではない(原告らが上記紛争が解決されるまで未払著作権印税の受領を拒絶したものではない。)。原告らは,本件著作権譲渡契約において定められた催告及び催告期間(20日間の期間を定めた文書による催告)を経て,本件解除に至ったのであり,被告において,未払著作権印税を支払おうと思えば支払うことができたにもかかわらず,これを支払わなかったために本件解除に至ったにすぎないのであるから,原告らによる本件解除が解除権の濫用として許されないものであるということはできない。
よって,被告の上記主張は理由がない。
(3)消滅時効(労働基準法115条)について
ア 被告は,本件専属契約に基づく債権が「賃金」に該当し,原告らは,債権を行使し得るときから2年間これを行わなかったから,上記債権は時効により消滅した(同法115条)旨主張する。
「賃金」とは,名称のいかんを問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう(労働基準法11条)。
イ ところで,本件専属契約における報酬及び就業条件は,下記のとおり定められていた。
(略)
上記のとおり,本件専属契約においては,GLAYメンバーらの活動により得られた利益,収入から経費を控除した残額の一定割合を支払うものとされていること,プロモーションや宣伝活動とみなされる出演については,被告はGLAYメンバーらに対して一切の金銭を支払わないものとされていること,興行,コンサート,イベントへの出演については,その収支が赤字の場合,被告はGLAYメンバーらに対し,金銭の支払義務を負わないものとされていることなどに照らせば,本件専属契約に基づき被告からGLAYメンバーらに対して支払われる金銭は,GLAYメンバーらの活動により得られた経済的利益の分配金の性質を有するものと考えられる。また,本件においては,他に,GLAYメンバーらの活動における,同人らと被告との関係の実情を適確に認定するに足る証拠はない。
以上のとおりであるから,本件専属契約に基づく債権が,GLAYメンバーらの被告に対する労働の対償としての性質を有するもの(賃金)であると認めることはできない。
よって,被告の上記主張は理由がない。
(4)消滅時効(民法174条2号)について
ア 被告は,本件専属契約に基づく債権,本件著作権譲渡契約に基づく債権,本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,いずれも,民法174条2号の定める「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」に該当し,債権を行使し得るときから1年間行使しなかったことにより時効消滅した旨主張する。
イ 民法174条は,同条各号に列挙された債権については,極めて短期に決済されるのを通常とし,その弁済につき領収書等の証拠書類も作成しないことが多いことを理由として,1年という短期の消滅時効を定めたものである。
(ア)本件専属契約に基づく債権
本件専属契約に基づく債権は,別紙1ないし4によれば,「アーティスト印税」,「原盤印税」,「著作権印税」のほか,「マネージメント」,「カレンダー05」,「通販-EXPO」,「物販-ARENA」,「物販-COUNTDOWN」,「M-UP
PHONE」,「レコード印税」,「ARENA TOUR」,「通販-ARENA」,「COUNTDOWN」,「物販-DOME」,「DOME+大阪 公演」,「通販-COUNTDOWN」,「使用許諾料」,「通信販売ロイヤリティー」等に係るものである。
そして,本件専属契約に基づく債権のうち,「契約書」に基づくものについては,「甲(判決注・被告)が支払う前条印税は,毎年3月,6月,9月,12月の甲の各計算締切日にて締め切り,当該締切日の月末より90日以内に明細書を添付の上支払うものとする。」と弁済期が定められており(第8条(1)),「覚書」に基づくものについては,「乙(判決注・被告)は甲(判決注・GLAYメンバーら)に対して,・・・甲の実演家活動による乙または第三者よりの収入に対する報酬を,3月,6月,9月,12月の各月末日にて締め切り,明細書を添付の上,翌々月末日に甲に支払う。」と定められている(第3条)。
以上によれば,本件専属契約に基づく債権は,その内容や支払期日の約定に照らし,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。
そうすると,本件専属契約に基づく債権は,民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであるから,同号所定の債権には該当しないというべきである。
(イ)本件著作権譲渡契約に基づく債権
本件著作権譲渡契約に基づく債権は,別紙1ないし4によれば,「著作権印税」であり,これは著作権譲渡の対価として,作品が使用された場合に支払われる著作権使用料である(甲7の第10条参照)。
また,本件著作権譲渡契約に基づく債権については,「乙(判決注・被告)は,毎年3・6・9・12月の年4回,各月末日をこの契約に関する会計計算締切日と定め,当日までに・・・発生した本件著作権の著作権使用料についてこの契約の諸条項に基づいて分配の計算を行い,各締切日後60日以内に計算明細書を甲(判決注・著作権譲渡人)の指定する住所に送付し,著作権使用料を甲の指定する銀行口座への振込みをもって支払うものとします。」と定められている(甲7の第11条参照)。
以上によれば,そもそも,本件著作権譲渡契約に基づく債権は,その内容に照らし「演芸を業とする者の報酬又はその供給した物の代価に係る債権」には該当しないというべきであるし,その支払期日の約定に照らしても,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるから,民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであり,同号所定の債権には該当しないというべきである。
(ウ)本件原盤使用許諾契約に基づく債権
本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,別紙1によれば,「原盤印税」であり,特定の原盤を使用して複製・頒布されたレコードについて,商品の売上数量1枚当たり一定の割合の金銭が支払われるものである。
また,本件原盤使用許諾契約に基づく債権については,「乙(判決注・被告)は,四半期(3月,6月,9月,および12月各末日締切)毎に印税の発生額を計算し,締切後翌々翌月末に計算書を甲(判決注・原告エクストリーム)が指定する住所に送付の上,当該発生印税額を甲の指定する口座に振込む。」と定められている(第6条(3))。
以上によれば,本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,その内容や支払期日の約定に照らし,短期に決済されることが予定されている債権とはいえず,債権額の確定に当たっては明細書等を作成することが予定されているものであるといえる。
そうすると,本件原盤使用許諾契約に基づく債権は,民法174条2号が予定する債権とは性質を異にするものであるから,同号所定の債権には該当しないというべきである。
(エ)よって,被告の上記主張も理由がない。
(オ)被告が,(3)及び(4)で消滅時効を主張する債権は,いずれも,商事債権として5年の消滅時効に服するものと解される。
そして,上記各債権は,いずれも,本訴が提起された平成19年10月26日において,弁済期から5年を経過していないから,時効により消滅したとはいえない。
(略)
3 まとめ
(1)確認請求について
上記1の(1),(2)及び2の(1),(2)によれば,本件著作権譲渡契約は,被告の著作権印税の支払債務の履行遅滞により有効に解除され,これにより,本件楽曲の著作権は,本件著作権譲渡契約における譲渡人(GLAYメンバーら)に帰属した上で,GLAYメンバーらから原告エクストリーム,原告パイロッツ,原告スパイク又は原告ストローに対し,次いで,同原告らから原告ラバーソウルに対し,順次譲渡されたのであるから,原告らの本訴請求のうち,原告らと被告との間で,原告ラバーソウルが本件楽曲の著作権を有することの確認を求める部分は理由がある。
(2)金銭請求について
(以下略)