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著作権判例セレクション
【写真著作物】 プロフィール画像及びヘッダー画像の著作物性を認めた事例
▶令和2年2月12日東京地方裁判所[令和1(ワ)22576]
(前提事実)
原告は,「A」の名称で,電子たばこに使用するフレーバーリキッドを製造している者であり,ツイッターアカウント(「原告アカウント」)を開設し,同アカウントのプロフィール画像及びヘッダー画像として,別紙記載の画像(以下,それぞれ「本件プロフィール画像」及び「本件ヘッダー画像」といい,併せて「本件プロフィール画像等」という。)を掲載していた。
3 争点3(権利侵害の明白性の有無)について
(1) 争点3-1-1(本件プロフィール画像等の著作物性)について
ア 被告は,本件プロフィール画像に撮影者の創意工夫は特段認められず,本件ヘッダー画像も女性のイラストは原告が創作したものではなく,それ以外の部分もありふれた表現にとどまるから,著作物に当たらないと主張する。
しかし,本件プロフィール画像は,別紙著作物目録のプロフィール画像欄記載のとおりであり,証拠によれば,口から煙を出している原告の顔を正面から撮影し,中心からやや下方に原告アカウントのユーザー名を記載したものであって,文字部分を含めた全体の構図や,光の当て方,顔の角度,漂う煙がきれいに見えるように流れ方,量及び濃度などを調整した上でシャッターチャンスの捕捉をしている点などを工夫して撮影されたものと認められる。
そうすると,本件プロフィール画像は,原告の思想,感情を創作的に表現したものであって,写真の著作物に当たると認めるのが相当である。
イ 本件ヘッダー画像は,別紙著作物目録のヘッダー画像欄記載のとおりであり,右側に口から煙を出している女性のイラストが描かれ,その左側及び全体の背景に観覧車や花,空の画像を加え,透かしを入れてこれらの画像を重ね合わせたものである。原告は,女性のイラストの作者から利用許諾を受けて,これに観覧車等の画像を追加し,全体の構図等を決めて本件ヘッダー画像を作成したものであって,ありふれた表現にとどまるということはできず,原告の個性が十分に表れたものというべきである。
したがって,本件プロフィール画像等は,原告の思想,感情を創作的に表現したもので,美術の範囲に属するものとして,著作物に該当する。
(2) 争点3-2-2(原告が本件プロフィール画像等の著作権者であるか)について
(略)
(3) 争点3-1-3(適法な引用の成否)について
被告は,本件各投稿において本件プロフィール画像等を掲載したことが適法な引用(著作権法32条1項)に当たるので,権利侵害の明白性が認められないと主張するところ,他人の著作物を引用した利用が許されるためには,その方法や態様が,報道,批評,研究等の引用目的との関係で,社会通念に照らして合理的な範囲内のものであり,かつ,引用して利用することが公正な慣行に合致することが必要である。
本件投稿1,2,6及び7は,ツイッター上で,原告が本件アカウントのユーザーをブロックしたことについて,第三者のツイートに賛同しただけでブロックしたことを批判するとともに,電子たばこである「VAPE」を使用する者に対し,原告が販売するリキッドの購入について注意を呼びかける内容の文章が記載され,それに加えて,原告アカウントが本件アカウントのユーザーをブロックしている画面のスクリーンショット(携帯電話の画面を撮影した画像であり,本件プロフィール画像等が含まれている。)を掲載したものである。
また,本件投稿3~5は,本件アカウントのユーザーがブロックの理由を原告に尋ね,原告がそれに対して答える動画をツイッター上に投稿したところ,当該動画における原告の回答内容を記載した文章とともに,当該動画の一部をスクリーンショットした本件静止画を掲載したものであり,右上に本件プロフィール画像が掲載されている。
上記のとおり,本件各投稿は,原告が本件アカウントのユーザーをブロックしたことを繰り返し非難した上で,原告が販売するリキッドの購入について注意を呼びかける内容となっているところ,同各投稿の目的,内容等に照らすと,上記ユーザーが本件各投稿を行うに当たり,原告の容姿等の写った本件プロフィール画像等及び本件静止画をツイッター上に掲載する必要性があったとは認められない。
また,本件各投稿の際に掲載された本件プロフィール画像等は,画面全体において目立つ態様で表示され,更に操作によっては携帯電話(スマートフォン)の画面において独立して鑑賞の対象となり得る程度の大きさで閲覧することも可能であることも考慮すると,同各投稿において引用された本件プロフィール画像等が従で,他の記載が主の関係にあるということもできない。
以上によれば,本件各投稿における引用の方法及び態様が,引用目的との関係で社会通念に照らして合理的な範囲内のものであると認めることはできないというべきであり,本件プロフィール画像等を引用して利用することが公正な慣行に合致すると認めるに足りる事情も存在しない。
したがって,本件各投稿における本件プロフィール画像等の掲載が適法な引用に当たるということはできない。
(4) 以上のとおり,本件各投稿は,本件プロフィール画像等を著作権者である原告に無断で公衆送信するものであり,違法性阻却事由の存在もうかがわれないから,原告の公衆送信権を侵害することが明らかである。