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著作権判例セレクション

【写真著作物】イベント会場の様子を撮影した写真の著作物性を認めた事例

平成27625日東京地方裁判所[平成26()19866]
1 争点(1)(本件写真517の著作物性及び著作者)について
1)前記争いのない事実等に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。
ア 原告は,本件顧問契約締結後,本件会社が主催し,あるいは出店する各種イベントの事前準備や当日の運営に協力しており,その一環として,イベント会場の様子を写真撮影した。原告は,本件会社のウェブサイト等に当該イベントの紹介記事と共に掲載し会場の雰囲気を伝えるという写真撮影の目的を踏まえ,ゲストを招いてのトークショーの際には出演者がはっきり分かるよう,逆に,一般人が参加している様子を撮影する際は顔が写らないようにし,また,会場が盛り上がっている様子が分かるようにして,テーマのあるイベントの場合は何のイベントか分かるような写真とすることを心掛けた。他方,被告が原告に対し写真撮影の方法,構図等について具体的な指示を行うことはなかった。
イ 本件写真5~10は,平成25年2月11日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。
いずれの写真も会場前方の舞台でトークショーに出演している出演者を客席の後方から撮影したもので,本件写真9及び10は,横長の画面を用い,舞台上の出演者の位置や多数の観客が入っている様子が分かるようになっており,本件写真9には出演者がスライド様の画像を用いながら観客に向かって話をしている様子,本件写真10には3人の女性出演者が楽しそうに笑っている様子が写されている。本件写真5及び6は,それぞれ本件写真10及び9の出演者の部分を拡大したものである。本件写真7には一人の出演者が本件商品を用いて他の出演者の手をマッサージしている様子が,本件写真8には熱心に話す中央の出演者を両側の出演者が見守っている様子が,それぞれ写されている。
ウ 本件写真11~13は,同年4月26日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。
本件写真11は,本件会社のブースを写したものであり,机の上に本件商品,本件会社のウェブサイトを表示したノートパソコン,雑誌,ポスター等が整然と展示されている様子が写されている。本件写真13には上記ウェブサイトを閲覧している女性とそれを見ている女性が写されているが,両名の顔が写らず,上記商品,雑誌,ポスター等が大きく写る構図になっている。本件写真12にはイベント会場でパーティーを楽しむ多数の参加者の様子が写されているが,各人の顔部分にはぼかしが施されている。
エ 本件写真14~17は,同年10月30日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。
本件写真14は,会場のバーカウンターを写したものであり,カウンター内のバーテンダーのほか,天井からつり下げられたジャック・オー・ランタンを模した大きな飾り2個,カウンターの上の魔法使い風の帽子をかぶせられたどくろのレプリカ等が写され,ハロウィンのイベントであることが分かるようになっている。本件写真15は,本件会社のブースを写したものであり,本件商品,本件会社のウェブサイトを表示したノートパソコン等が整然と展示されている様子が写されている。本件写真16は,上記ブースで,上記ウェブサイトを閲覧している女性を写したものであり,顔が写らず,本件商品等が大きく写る構図となっている。本件写真17は,左手に本件商品を持ち,笑顔でポーズを取っている仮装した参加者女性の上半身を大写しにしたものである。
2)上記認定事実によれば,原告は,本件写真5~17の撮影に当たり,写真を撮影する目的を踏まえて撮影対象を選び,背景,構図,撮影のタイミング等に工夫を加えて撮影しており,その画面上に原告の個性が表現されているということができる。したがって,これら各写真は原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物性を有すると認めるのが相当である。
これに対し,被告は,本件写真5~17はスナップ写真にすぎず著作物とは認められない旨主張するが,スナップ写真であっても思想又は感情が創作的に表現されていれば著作物性を認めることができるから,被告の主張は失当というべきである。