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著作権判例セレクション
【共同著作】ソフトウェア(ゲーム)の作製に複数人が関与した場合の共同著作者性
▶平成16年04月23日大阪高等裁判所[平成14(ネ)3322]
(ア) 各ソフト旧版の著作権の帰属について
a 各ソフト旧版のうち,「アイコンバトラー」の著作権がD個人に帰属することについては当事者間に争いがないので,「あいこっち」及び「ウィナーズサークル」の著作権が誰に帰属するかが争点となる(なお,「あいこっち2」の著作権が原告に帰属することについても当事者間に争いがない。)。
b 「あいこっち」について
(a) プログラムの著作物の作製に複数の者が関与している場合において,関与者が共同著作者となるためには,当該プログラムの作製に創作的に寄与していることを要し,補助的に参画しているにすぎない者は共同著作者にはなり得ないというべきである。
(b) 前提事実及び証拠によれば,以下の事実が認められる。
① Dは,平成9年初めころ,Kに対し,「あいこっち」の基本的なアイデアを話し,これを基に,Dの指揮の下に,AGE Eのメンバーであった被告C,P及びKに手伝ってもらって「あいこっち」を作製した。具体的には,製作総指揮及びグラフィックに関する部分はDが担当し,ゲームバランスに関する部分はKが担当し,被告C及びPはその他の細部を担当した。
なお,被告Bは,「あいこっち」の製作に一切関与していない。
② Dは,これまで,K及びPから,「あいこっち」について権利があると主張されたことはなく,被告Cからも,本件の紛争が発生するまでは権利を主張されたことはなかった。
③ Dは,平成9年11月ないし12月ころ,被告C,P及びKが「あいこっち」の製作に関与したことから,それまでの収益を上記3名に分配し,これによって,Dが専属的に「あいこっち」に関する著作権を有することを確認した。
(c) 前記(b)の認定事実によれば,「あいこっち」の製作にあたり,Dが基本的なアイデアを出した上,製作についても主導的な役割を果たしているのであって,D以外の3名は,補助的に参画したにすぎないものと認められる。
したがって,「あいこっち」の著作権はDに専属的に帰属するというべきである。
もっとも,証拠によれば,Kについては,「あいこっち」のプログラムの作製に創作的に寄与したと認める余地が全くないわけではない。しかし,仮に,そうであったとしても,前記(b)③のとおり,Dが他の3名に対して収益を分配することによって,Dと他の3名間で,「あいこっち」の著作権をDに専属的に帰属させることを合意したものと認められる。
なお,ホームページ上における「あいこっち」の著作権に関する表示が「AGE Entertainment」となっているが,これは,Dが著作権の帰属主体について厳密に検討しないまま,外見上の理由から,このように記載したものであると認められ,また,「あいこっち」と異なり,後記の「ウィナーズサークル」の著作権の表示が「D」となっているが,これは,そもそも「ウィナーズサークル」にはD以外のAGE Eのメンバーが何ら関与していないことによる差異にすぎず,これらの表示が著作権帰属についての上記認定を左右するものではない。
c 「ウィナーズサークル」について
(a) 前提事実及び証拠によれば,Dは,被告Bから,競馬についての助言を得て,「ウィナーズサークル」を発案,製作(プログラミング)したが,上記助言以外に,「ウィナーズサークル」をコンピュータプログラム化するに際して,被告Bから具体的な協力を得ていないこと,Dが「ウィナーズサークル」を自分で開発したものとして発表していたことについて,本件事件発生まで,被告Bから苦情を申し入れられたことや売上の分配を要求されたことはなかったことが認められる。
(b) 前記(a)の認定事実によれば,「ウィナーズサークル」のコンピュータプログラム化を行ったのはDであり,被告Bは,Dに対して競馬の知識を教示したにすぎず,具体的なコンピュータプログラム化に対する助言を行ったり,製作過程の全部又は一部を分担したりしたということはない。そうすると,被告Bは,「ウィナーズサークル」の開発に関し著作権の帰属を基礎づけるような関与は行っておらず,「ウィナーズサークル」の著作権は,Dに専属的に帰属するというべきである。
仮に,「ウィナーズサークル」が被告Bの発案によるものであったとしても,アイデア自体は著作権法によって保護されるものではないから,これが被告Bの著作権の帰属を基礎づけるものではない。