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著作権判例セレクション

【不法行為】著作財産権侵害に基づく精神的損害(慰謝料)請求の可否

▶平成171208日大阪地方裁判所[平成17()1311]
(2) 精神的損害について
ア 本件各使用によって侵害されたのは原告の著作権(複製権)であり、財産権である。
そして、一般には、財産権が侵害されたことによって、被害者に精神的苦痛が生じたとしても、その苦痛は、原則として、財産的損害が賠償されることによって慰謝されると解すべきである。
もっとも、侵害された財産権が、被害者にとって、単なる財産的価値にとどまらず、特別の精神的価値があるものであり、その侵害によって、財産的損害の賠償によって十分に慰謝されないなどといった特段の事情がある場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める余地があると解される。
これを本件についてみるに、本件写真の著作権が、原告にとって、単なる財産的価値にとどまらない特別の精神的価値があるものであると認めるに足りる主張も証拠もない。
イ 原告は、上記両被告は、著作物を扱うことによって営業しているものであるから、本件契約を解除した後は、本件写真が原告に無断で使用されるなどとは思いもよらなかったところ、本件写真を無断で使用されたことによって非常な精神的損害を被ったと主張する。
そこで検討するに、財産権侵害の不法行為であっても、加害者の加害態様の悪性が特に強く、財産的損害とは別に精神的損害が生じたと認められる場合には、財産的損害の賠償の他に、慰謝料の請求を認める特段の事情となり得るとしても、原告が上記のとおり主張するところは、財産的損害の賠償のほかに、慰謝料の請求を相当とするまでの事情とは解することができない。また、本件全証拠によっても、侵害の態様その他について、慰謝料の請求を認めるべき特段の事情を認めることもできない。
したがって、原告の精神的損害についての慰謝料の請求は、理由がない。