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著作権判例セレクション

【映画著作物】ゲームソフトの映画著作物性を認定した事例

▶平成90717日大阪地方裁判所[平成5()12306]
1 まず、本件ゲームソフトウエアが映画の著作物に該当するか否かについて検討する。
前記によれば、本件ゲームソフトウエアは、ゲームカセット内に収納されていて、プログラムメモリーに、各テレビゲームのキャラクターや背景の形・色の影像情報、効果音やBGMの楽器音の音声情報、及びキャラクターをどの場面でどのように動かし、影像に合わせてどのような音楽を発生させるかを指示し、またゲームプレイヤーのコントローラー操作に対応してゲームストーリーを変化させる多数多種の命令情報を記憶しており、右影像情報、音声情報及び命令情報を本件ゲーム機本体に指示するものであり、プレイヤーがコントローラーを操作することにより発せられるゲーム操作情報(電気信号)及びそのゲーム操作情報に対応して本件ゲームソフトウエアから発せられるゲーム情報(電気信号)を本件ゲーム機本体内のCPUが読み取り、これを高速で合成処理して、ビデオ回路を通じて影像信号を、音声回路を通じて音声信号を受像機に出力し、もって受像機の画面上に映し出される影像を変化させ、併せてスピーカーから音声を発生させるというものである。
しかして、著作権法にいう映画の著作物(1017号)は、本来の意味における「映画」だけでなく、「映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物」(同法23項)を含むところ、本件ゲームソフトウエアと本件ゲーム機を使用することにより音声を伴って受像機に映し出される影像は、本来の意味における「映画」ではないが、音声を伴って影像が動きをもって見えるという視聴覚的効果を有しており、また、右影像の動的変化及び音声は、すべて本件ゲームソフトウエアに規定されているところによるのであり、これから離れて別の影像や音声を出力することは不可能であるから、ゲームカセット内のプログラムメモリー内に電気信号として取り出せる形で固定されているというべきである。このように本件ゲームソフトウエアにより受像機に映し出される影像の内容についていえば、たとえば「餓狼伝説」は、前記によれば、いわゆる格闘ゲームの一種であり、マーシャルアーツ(格闘技の一流派)の達人「テリー・ボガード」ら三人の主人公キャラクター及び対戦相手キャラクターを設定し、右主人公キャラクターが史上最強の武闘会「キング・オブ・ファイター」に出場し、「必殺技」及び「超必殺技」を駆使して対戦相手キャラクターである七人の格闘家との格闘を勝ち抜き、最後に仇敵「ギース・ハワード」との宿命の戦いに挑むというストーリー展開のものであって、平成412月及び平成57月にはテレビアニメ化されて全国放映されたというのであるから、著作者の知的文化的精神活動の所産として産み出されたものというべきであり、弁論の全趣旨によれば、その他の本件ゲームソフトウエアの内容も同様に著作者の知的文化的精神活動の所産として産み出されたものと認められる。
したがって、本件ゲームソフトウエアに蓄積された情報に従って本件ゲーム機により受像機に映し出される影像の動的変化又はこれと音声によって表現されるものは、そのそれぞれがいずれも映画の著作物として認められるための前記法律上の要件を満たしており、映画の著作物に該当するというべきである。