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著作権判例セレクション

【写真著作物】「コーヒーを飲む男性」という題名の写真素材の著作物性

▶平成30329東京地方裁判所[平成29()672]
1 争点(1)(本件写真素材は著作物に当たるか)について
(1) 写真は,被写体の選択・組合せ・配置,構図・カメラアングルの設定,シャッターチャンスの捕捉,被写体と光線との関係(順光,逆光,斜光等),陰影の付け方,色彩の配合,部分の強調・省略,背景等の諸要素を総合してなる一つの表現であり,そこに撮影者等の個性が何らかの形で表れていれば創作性が認められ,著作物に当たるというべきである。
(2) これを本件についてみると,本件写真素材は,別紙1のとおりであるところ,右手にコーヒーカップを持ち,やや左にうつむきながらコーヒーカップを口元付近に保持している男性を被写体とし,被写体に左前面上方から光を当てつつ焦点を合わせ,背景の一部に柱や植物を取り入れながら全体として白っぽくぼかすことで,赤色基調のシャツを着た被写体人物が自然と強調されたカラー写真であり,被写体の配置や構図,被写体と光線の関係,色彩の配合,被写体と背景のコントラスト等の総合的な表現において撮影者の個性が表れているものといえる。したがって,本件写真素材は上記の総合的表現を全体としてみれば創作性が認められ,著作物に当たる。
(3) これに対し,被告は,本件写真素材は,背景,照明・光量,色合いのいずれにおいても多くの類例がみられる平凡かつありふれた表現であり,創作性が存在しないため,著作物とは認められないと主張する。しかし,写真の創作性は,写真を構成する諸要素を総合して判断されるべきものであるところ,背景,照明・光量,色合い等の各要素において,それぞれ似たような例が存在するとしても,そのことは直ちに創作性を否定する理由とはならない。本件写真素材の総合的表現を全体としてみればそこに創作性が認められることは前記(2)のとおりであるから,被告の主張は採用できない。