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著作権判例セレクション

【過失責任】「インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴することができるようにするサービス」の事業者の過失責任を認定した事例(「まねきTV事件」差戻し審)

▶平成240131日知的財産高等裁判所[平成23()10009]
3 争点(3) (被告の過失)について
証拠によれば,原告らは被告に対し,平成16年10月28日付け(同年11月4日配達)及び平成17年1月28日付け(同月29日配達)で警告書を送付し,本件サービスが原告らの公衆送信権・送信可能化権の侵害に該当し,著作権及び著作隣接権を侵害するものである旨,本件サービスと同種のサービスの運営会社に対し,東京地裁が平成16年10月7日付けでサービスの差止めを命じている旨,被告に対し,本件サービスの中止を要求するとともに,書面による回答を求める旨を通知したことが認められるから,被告において,遅くとも平成16年11月4日の時点で,本件サービスが公衆送信権及び送信可能化権の侵害に該当するとの法律解釈もあり得ると認識できる状況であったというべきである。そうすると,本件サービスのような事業について,その適法性に関する法律解釈や実務上の取扱いが分かれ,直ちに違法であるとの認識を持つことが期待できるような状況ではなかったとしても,被告は,上記の時点以降は,少なくとも本件サービスが違法とされる可能性があることを認識し得たものであり,それによる著作権及び著作隣接権の侵害行為を中止しなかったことについて過失が認められる。
これに対し,被告は,著作権法の基本的文献に,本件サービスは適法であると解されるような記述があり,上記の時点後の本件サービスに関する仮処分事件では,ベースステーションないしこれを含む一連の機器が「自動公衆送信装置」に該当しない旨判断され,本件訴訟の第1審及び差戻前第2審でも,被告の行為が原告らの著作権及び著作隣接権を侵害しない旨判断され,知的財産権法の専門家も上記の判断を概ね肯定していたとして,被告には,本件サービスの違法性を認識する可能性はなく,過失がない旨主張する。しかし,被告の主張は,以下のとおり失当である。
すなわち,被告主張の事実を前提としても,本件サービスのような態様の行為が著作権及び著作隣接権を侵害するかについて法律解釈に争いがあり,これを争点とする訴訟が係属する以上,裁判所が最終的に著作権及び著作隣接権の侵害に当たると判断する可能性があることは,被告においても容易に認識することができ,又は,認識していたであろうと理解される。したがって,被告の主張する諸事情が存在したことは,被告に過失がないとする根拠とならないというべきである。