Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【出版許諾】出版者の義務(822項の類推適用を認めた事例)

昭和481031日東京地方裁判所[昭和48()5424]
ところで、出版許諾契約に基づいて、出版者があらためて複製ないし増刷する場合にも、著作権法第82条第2項の通知を要するかについては、右通知義務が、著作者の人格的利益を保護する目的に出た著作者の著作物を修正増減する権利を確保しようとするものであつて、著作者の人格権に由来するものであるから、これを積極に解するのが相当であり、前記法条が類推適用されるものといわなければならない。
原告は、原告著作物を、許諾なく、被告の「ユートピア双書」の一巻として、装幀、体裁を従来のものと異にして出版した行為は、著作権侵害にあたる旨主張する。しかし、本件出版契約においては、発行部数について、単に初版第一刷を3000部と約定しており、著作権使用料についても、定価の8パーセントとし、率をもつて定めていることを考え合せれば、他に特段の事情の認められない本件においては、第二刷以下の出版による複製も当事者間において当然見込まれていたものと認めるに妨げがなく、このように、広く出版による複製を許諾している以上、著作権侵害の成立する余地はなく、仮に原告主張の点に関し約定があつたとしても、単に合意の内容に違背した債務不履行が問題になるにすぎず、右著作権侵害に基づく著作権使用料相当額の損害賠償請求としては理由がない。