Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【共同著作】 気功に関する書籍の共同著作物性を認定した事例

平成141210日大阪地方裁判所[平成13()5816]
1 争点(1)(原告は本件書籍の著作権を有するか。)について
(1) 本件書籍には、その著者として、原告の氏名及び被告Bのペンネーム「B′」が記載されているから、本件書籍の著作者は原告及び被告Bであると推定される(著作権法14条)。
被告らは、本件書籍の著作者は被告Bであり、原告は本件書籍の著作権を有するものではないと主張する(上記推定が覆されるという趣旨と解される。)ので、以下、本件書籍の著作権の帰属について検討する。
(2) 証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
()
(3)ア 著作権法は、思想又は感情の創作的な表現の保護を目的とし、その創作的な表現を行った者を著作者とするものであるから(著作権法2条1項1号、2号)、著作者を認定するに際しては、その思想、感情、アイデア、事実等の表現それ自体でない部分に着目するのではなく、それらを誰が創作的に表現したかが問題となる。
イ 上記のとおり、被告Bが本件書籍の日本語原稿を執筆したものであるが、本件書籍には、原告でなければ用いないような中国語的な表現や、執筆者が原告であることを前提とするような表現を用いた部分、原告が手渡したメモ書きがほぼそのままの表現で記載されている部分が存しており、しかも、本件書籍執筆当時の原告の日本語能力は、助詞、外来語の使用等についてやや問題があったものの、日本語の会話、読書きはほぼ問題なくできる域に達しており、本件書籍に示された日本語表現をすることは可能であったと推認される。
ウ また、第四章に記載されている気功法の大部分は原告が提示したものであり、その中には原告が創作した独自の要素を含む気功法も含まれており、原告は被告Bに対しこれらの気功法の動作、注意点を具体的に伝えたものと推認できる。
そして、本件書籍第四章における気功法の記載は、前記のように、動作、注意点をほぼそのまま記載したもの(例えば、「双盤座の姿勢で背中に手を回し、合掌します。次に、そのまま上体を前に倒し、額を床につけしばらく合掌します。」)であるから、こうした記載内容からすると、原告が提示した気功法について、日本語原稿を執筆した被告Bによって、日本語としてより適切な表現やわかりやすい表現にするなどの創作的な表現要素が含まれているものの、原告が被告Bに伝えた具体的な気功法の動作、注意点が、文章表現においても表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ反映されているものと推認できる。
エ 上記のような事情からすると、本件書籍における創作的な表現は、原告が掲載を提案した気功法に関する部分も含め、原告及び被告Bが共同で行ったものであり、本件書籍は原告及び被告Bの寄与を分離して個別的に利用することができないものであるから、共同著作物(著作権法2条1項12号)に当たるというべきである。
オ なお、原告は、原告が独自に発案し、本件書籍で初めて発表した内容・功法に関するものについては、原告の単独著作物であると主張する。上記(2)記載のとおり、本件書籍の第四章には、原告が創作した独自の要素を含む気功法に関する記載部分があるが、上記のとおり被告Bが日本語原稿を作成する際に、日本語としてより適切な表現やわかりやすい表現にするなどの創作的な表現要素が含まれていると解されるから、そうした部分について原告の単独著作物であるとする原告の主張は理由がない。