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著作権判例セレクション

【言語著作物】ドキュメンタリー作品の創作性

平成130326日東京地方裁判所[平成9()442]
() 原告は、昭和16年、旧満州国の「新京」(現在の中華人民共和国吉林省長春市)に生まれ、幼少時に中国革命戦争下の共産党軍(八路軍)の長春包囲戦に巻き込まれ、長春を脱出する際に国民党軍と八路軍の間に設けられた「?子(チャーズ)」において脱出を許されるまでの数日間凄惨な状況の中に置かれたという自らの体験をもとに、原告各著作物を著作した。

2 まず、原告各著作物の創作性について述べる。
原告各著作物は、原告の体験した事実や歴史的事実を基礎に記述された読み物である。自ら体験した事実や歴史的事実に関する記述部分であっても、どのような事実を取捨選択するか、また、どのように表現するかについては、様々な方法があり得るから、表現上の創意工夫の発揮される表現が用いられている限り、原則として、創作性が認められることはいうまでもない。
ところで、対照表一における原告記述部分(上段)については、一部分の複製権侵害ないし翻案権侵害を主張するため、①原告各著作物の中で、極く短い文章部分のみを抜粋して掲記している例や、②対比の便宜上、別個独立した複数の文章を結合させた例がみられる。このような例において、極く短い文章や、表現形式に制約があって、およそ他の表現が想定できない文章や、平凡かつありふれた表現からなる文章である場合には、筆者の個性が現れているとはいえないものとして、例外的に創作性を否定すべきと解される。