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著作権判例セレクション

【美術著作物の侵害性】「ミウラ折り」を応用した照明用シェードの著作物性及び翻案性が争点となった事例

令和2129日東京地方裁判所[平成30()30795]
( ) 本件は,原告らが,被告らが制作した別紙作品の「Prism Chandelier」(「被告作品」)は,原告らが制作した著作物である別紙記載の照明用シェード(「原告作品」)を改変したものであるから,被告らが被告作品を制作,販売,貸与又は展示する行為は原告らの翻案権及び同一性保持権を侵害すると主張して,著作権法112条1項及び2項に基づき,被告らに対し,被告作品の制作,販売,貸与及び展示の差止めなどを求めた事案である。
※原告作品について:「ミウラ折りとは,東京大学名誉教授・文部科学省宇宙科学研究所名誉教授の三浦公亮氏によって,円筒に丸めた紙を縦に潰したときに表れる皺のパターンなどの自然現象の中から発見された折り方で,折られた状態から15 最小のエネルギーによって展開状態に変化するため,人工衛星の太陽電池パネルや携帯地図の折り畳み方として実用化されている。具体的には,紙を折り畳む際に直角の折から少しずらして折る折り方で,これにより,横方向の折り線は等間隔の並行直線,縦方向の折り線は等間隔のジグザグ線となり,すべて等しい平行四辺形の面ができる。折り目の頂点は3つの山折りと1つの谷折り(又は3つの谷折りと1つの山折り)からなり,全ての折りが連動されて,縦方向の屈伸に連動して横方向と幅方向が伸縮する独特の振舞いをする。原告らは,シート状のものにミウラ折りを施すことにより,強度と立体保持力が増すという特性が,プロダクトやアート作品のキーパーツを成立させる上で有効であることに着眼し,複数の円形孔が設けられたフレームにミウラ折りを応用してシート状の素材を折ったもの(エレメント)を複数挿入する照明用シェードである原告作品を開発した。」


1 争点1(原告作品の著作物性)について
原告作品は,照明用シェードであり,実用目的に供される美的創作物(いわゆる応用美術)であるところ,被告らはその著作物性を争うが,同作品は後記記載のとおり,内部に光源を設置したフレームの複数の孔にミウラ折りの要素を取り入れて折ったエレメントの脚部を挿入し,その花弁状の頭部が立体的に重なり合うように外部に表れてフレームを覆うことにより,主軸の先端から多数の花柄が散出して,放射状に拡がって咲く様子を人工物で表現しようとしたものであり,頭部の花弁状部が重なり合うことなどにより,複雑な陰影を作り出し,看者に本物の植物と同様の自然で美しいフォルムを感得させるものである。このように,原告作品は,美術工芸品に匹敵する高い創作性を有し,その全体が美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているものであって,美術の著作物に該当するものというべきである。
2 争点2(被告作品の翻案該当性)について
(1) 著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照),既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決)。
本件では,依拠性には争いがないことから,被告作品から原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかについて検討する。
(2) 原告作品の形態及び製法等
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(3) 被告作品の形態及び製法等
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(4) 原告作品と被告作品の共通点及び相違点
()
(5) 翻案該当性
上記(4)で認定した共通点及び相違点を前提に,被告作品から原告作品の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかについて検討する。
ア 原告作品の本質的特徴
() 原告らは,原告作品の特徴は,①原告エレメントには脚基部が存在することによりエレメントを確実に保持できること(特徴X①),②エレメントの頭部同士が立体的に重なることにより,本物の植物が見せるのと同様の自然で美しい輪郭を有していること(特徴X②),③エレメントにミウラ折りの要素を取り入れつつ,それに独自の工夫を加えていること(特徴X③),④脚部と花弁状部が,光源の放つ光に対して二重の変化を与えることにより,極めて複雑な陰影の表情が発露されること(特徴X④)にあると主張する。
() そこで,検討するに,原告作品と同様の照明用シェードである「umbel」についての原告らの説明によれば,原告作品の基本的なコンセプトは,主軸の先端から多数の花柄が散出して,放射状に拡がって咲くという自然界の散形花序の特徴を,人工物である照明用シェードによって表現することにあり,本物の植物が見せるのと同様の自然で美しいフォルムをもった照明シェードを制作することにあると認められる。
こうしたコンセプトに基づき,上記(2)ウのとおり,原告作品の個々のエレメントは,剣先状の6個の花弁と,その内側に配置された12個の頂点を有する大きな星形状の花弁と,さらにその内側に配置された,12個の頂点を有する小さな星形の花弁から形成され,これにより,自然の花が球状体の中心から放射状に外を向いて開花しているかのよう25 な印象を看者に与えるものとなっている。
また,原告エレメントの各花弁のエレメント頭部の各花弁の縦方向中央には折り線が設けられているほか,ミウラ折りの要素を取り入れ,同中央部から斜め方向に平行な複数の折り線が設けられていることから,花弁1枚1枚の剣先及び剣先に至る部分に角度の変化が生じ,また,花弁同士が表面で重なり合うことにより,複雑で自然に近い陰影の表情が発露されている。
さらに,原告作品においては,原告エレメントに乳白ポリエステルシートを用いているところ,ポリエステルは光を拡散する光学的特性を有することから,豊かな陰影を形成することができ,また,自然界に存在する白い花に近い柔らかい色合いを同作品に与えているということができる。
加えて,原告エレメントは,エレメントの側面視において,大きな剣先状の6個の花弁及び大きな星形状の花弁の上端となる面が,水平方向を基準に,中心から上斜め方向に伸びた後,水平な角度となっていることから,フレームの表面に沿う方向に花弁が広がり,自然な散形花序のようなボール状の丸みを帯びた表面形状の形成が可能となっている。
以上によれば,原告作品の本質的特徴は,エレメントが球状体の中心から放射状に外を向いて開花しているかのような形状をしており,花弁同士が重なり合うなどして複雑で豊かな陰影を形成するとともに,その輪郭が散形花序のようにボール状の丸みを帯びた輪郭を形成していることにあるというべきである。
上記の原告作品の本質的特徴を実現するために重要な構成,形状は,前記(2)認定にかかる原告作品の構成,形状に照らすと,①原告エレメントが剣先状の花弁と,その内側に配置された大きな星形状の花弁状と,さらにその内側に配置された小さな星形状の花弁から構成されること,②エレメント頭部にミウラ折りの要素を取り入れ,各花弁の縦方向中央には折り線が設けられ,更に同中央部から斜め方向に平行な複数の折り線が設けられていること,③光を拡散する光学的特性を有する乳白ポリエステルシートが使われていること,④大きな剣先状の6個の花弁及び大きな星形状の花弁の上端となる面が,水平方向を基準に,中心から上斜め方向に伸びた後,水平な角度となっていることにあると考えられる。
() これに対し,原告は,原告作品の特徴は特徴X①~X④にあると主張するが,原告作品は照明用シェードであり,看者は,フレームの内部に設置された光源から光が発出された状態で,フレームの外側から原告作品を見ることになるのであるから,原告エレメントから構成される表面部の輪郭,形状,色,陰影などに最も注意を惹かれることとなると考えられる。このため,特徴X①の脚基部については,原告作品の鑑賞者にとって同部分は目に入らない部分であり,また,エレメントの保持力の強さはその機能にすぎないので,これを原告作品の本質的特徴であるということはできない。また,特徴X④に関し,原告作品において複雑な陰影の表情が発露されることは原告作品の特徴であるということができるが,脚部を有すること自体はフレームに挿入するために必要な部分であるにすぎず,その形状が特徴的であるということもできないので,脚部の存在や形状が原告作品の本質的特徴となるものではない。
その他の特徴として挙げられている特徴X②及びX③は,上記のとおり,原告作品の特徴点であると認められる。
イ 共通点について
以上を踏まえ,原告作品と被告作品の共通点A~Iについてみると,共通点Aは作品全体の構成であり,共通点B~Eはフレームの構成,形状等に関する共通点であり,いずれも,看者の目に入らず,その注意を惹かない部分であって,原告作品の本質的特徴を基礎付けるものではない。
また,共通点Fは,エレメントが脚部頭部から構成されるとの基本的な構成において共通することを意味するにすぎず,共通点Gについては,後記のとおり,これをもって被告作品にミウラ折りの要素が取り入れられているということはできない。共通点Hも,エレメントをフレームの孔に挿入すると,エレメントの脚部においてエレメントの挿入が止まるということはその機能上当然のことということができる。
さらに,共通点Iについては,フレームの表面上において,エレメント頭部が重なり合う点で共通するにとどまり,原告作品の輪郭に関する特徴を被告作品が有するものではない。
以上のとおり,共通点A~Iは,いずれも原告作品の本質的特徴を基礎付けるものではなく,これらの共通点から原告作品の本質的特徴を直接感得することはできない。
ウ 相違点について
次に,原告作品と被告作品との相違点について検討するに,前記判示のとおり,原告作品の本質的特徴を実現するために重要な構成,形状は,①エレメント全体の構成,形状,②花弁又は両刃部に設けられた折り線,③シートの素材,④花弁又は両刃部が伸びる方向にあるところ,前記(4)イのとおり,原告作品と被告作品にはこれらの点について相違点(順に,相違点D,E,B,G)があると認められる。
() 上記①に関し,原告作品と被告作品は,原告エレメントが剣先状の花弁と,その内側に配置された大きな星形状の花弁状と,さらにその内側に配置された小さな星形状の花弁から構成されているのに対し,被告作品の大エレメントは,大きな6個の大両刃部と小さな3個の小両刃部から形成され,小エレメントは,小さな3個の両刃部から構成され,大エレメントの小両刃部は大両刃部の間に配置され,小エレメントの両刃部は,大エレメントの互いに隣り合わない3個の小両刃部に対応する位置に配置されている点で相違する(相違点D)。
上記相違点により,原告作品のエレメントが,どちらかというと平面的で,実際の花がその中心部から花弁を開いているような印象を与えるのに対し,被告作品のエレメントは,両刃部の先端が鋭利で様々な方向に突き出していること(相違点G)もあいまって,より立体的で人工的な造形物に近い印象を看者に与えるものとなっている。
5 () 上記②に関し,原告作品と被告作品は,原告エレメントでは,ミウラ折りの要素を取り入れ,原告エレメントの各花弁に設けられた中央線から斜め方向の複数の折り線は平行であり,この斜め方向の折り線が等間隔のジグザグ線を構成しているのに対し,被告エレメントの両刃部に設けられた中央線から斜め方向の複数の折り線は,傾斜角度が異なり,等間隔のジグザグ線を構成していないことから,被告エレメントがミウラ折りの要素を取り入れているとはいえない点で相違する(相違点E)。
また,これに関連して,原告エレメントは,大きな剣先状の花弁,大きな星形状の花弁及び小さな星形状の花弁が,いずれも四角形で構成されるのに対し,被告作品の大エレメントの大両刃部の上端等が三角形で構成され,四角形で構成されるのはその一部にすぎないという点においても相違している(相違点F)。
上記のとおり,原告作品のエレメントが,ミウラ折りの要素を取り入れていることを特徴とし,これにより豊かな陰影を形成するとともに,柔らかい丸みを帯びた輪郭を形成しているのに対し,被告作品のエレメントは,大両刃部の上端等が三角形で構成され両刃部の先端が鋭利で様々な方向に突き出していること(相違点G)もあいまって,より立体的で人工的な造形物であるとの印象を看者に与えるものとなっている(特徴Y①)。
() 上記③に関し,原告作品と被告作品は,原告エレメントには,乳白ポリエステルシートが用いられているに対し,被告エレメントには,プリズムシートが用いられているという点で相違する(相違点B)。原告エレメントに用いられている乳白ポリエステルは,光を拡散させる光学的特性を有することから,光源からの光は拡散し,柔らかく豊かな陰影を形成することになるのに対し,被告エレメントに用いられているプリズムシートは,透過と屈折がその光学的特性であることから,鏡面反射も加わると,クリスタルの塊を思わせる,小さな虹を伴ったまばゆいばかりの光の塊となるという性質を有する。
このような素材の違いにより,原告エレメントは,光源からの光により乳白色に光り,柔らかく豊かな陰影を形成しているのに対し,被告エレメントは,フレームの内部に設置された光源の光の明るさが均一にむらなく光り,クリスタルのようなまばゆい輝きを放つものであり,原告作品とは全く異なる印象(特徴Y③)を看者に与えるものとなっている。
() 上記④に関し,原告作品と被告作品は,エレメントの側面視において,原告エレメントは,大きな剣先状の6個の花弁及び大きな星形状の花弁の上端となる面が,水平方向を基準に,中心から上斜め方向に伸びた後,水平な角度となるのに対し,被告エレメントにおいては,大エレメントの大両刃部及び小エレメントの両刃部の上端が水平より上斜め方向に伸び,大エレメントの小両刃部の上端が水平より下斜め方向に伸びるなど,その端部が様々な方向に突き出している点で相違する(相違点G)。
このような花弁又は両刃部が伸びる方向の差異により,原告エレメントは,フレームの表面に沿う方向に花弁が広がり,全体として,原告作品の表面は花冠が集合したようなボール状の丸みを帯びた印象を看者に与えるのに対し,被告エレメントの両刃部の先端はフレームの表面から離間する方向やフレーム表面に向かう方向など様々な方向に鋭く突き出していることから,被告作品の表面は凹凸があって刺々しい印象(特徴Y②)を与えるものとなっている(相違点I)。
() 以上のとおり,原告作品と被告作品とは,原告作品の本質的特徴を実現するために重要な構成,形状において相違しており,被告作品は,自然界に存在する花のような柔らかく陰影に富んだ印象を与えるのではなく,より立体感があって,均一にむらなく光り,クリスタルのようなまばゆい輝きを放つものであって,その輪郭も,散形花序のようにボール状の丸みを帯びたものではなく,凹凸のある刺々しい印象を与えるものであるから,被告作品から原告作品の本質的特徴を直接感得することはできないというべきである。
エ 原告らの主張について
() これに対し,原告らは,相違点Dに関し,原告作品も被告作品も,複数のエレメントをフレームに挿入し,エレメントの集合体を少し離れた場所から全体として鑑賞するものであり,エレメント同士が重なるため,エレメントの個々の形状の認識は困難であって,看者の印象には残らないので,上記相違点は重要ではないと主張する。
しかし,原告作品及び被告作品は相応の大きさを有するものであり,その写真に照らしても,エレメントの集合体でありながらも,個々のエレメントの有する形状や構成の特徴や美しさを容易に看取することができることは明らかであるから,エレメントの個々の形状の認識は困難であって,看者の印象には残らないとの原告らの主張は採用し得ない。
() 原告らは,相違点E及びFに関し,折り方の違いは,多面四角形のミウラ折りか多面四角形の対角線を折って多面三角形にしたものかというだけであり,被告エレメントにおいても,小エレメントの一部に多面四角形のミウラ折りが施され,いずれにしても斜め方向の折りを施したものである上,これによって生じる効果も同一であるので,上記各相違点は重要ではないと主張する。
しかし,ミウラ折りは,前記のとおり,横方向の折り線は等間隔の並行直線,縦方向の折り線は等間隔のジグザグ線となり,すべて等しい平行四辺形の面ができるというものであるところ,被告エレメントの両刃部に設けられた中央線から斜め方向の複数の折り線は,傾斜角度が異なり,等間隔のジグザグ線を構成していないことから,被告エレメントがミウラ折りの要素を取り入れているということはできない。
このため,被告作品のエレメントは,大両刃部の上端等が三角形で構成され両刃部の先端が鋭利で様々な方向に突き出していること(相違点G)ともあいまって,原告作品とは異なり,より立体的で人工的な造形物であるとの印象を看者に与えるものとなっているのであり,相違点E及びFに係る構成,形状の差異は原告作品の本質的特徴に係るものであるというべきである。
() 原告らは,相違点Bに関し,原告作品の制作当時,原告作品の素材としてプリズムシートを排していたことはなく,むしろ様々な素材で原告作品を制作することを想定していたのであるから,エレメントの素材の違いは本質的特徴の違いではなく,仮に被告作品がまばゆく光るものであるとしても,それは原告作品の特徴により生まれた光の表情をより強く感じさせる工夫にすぎないので,上記相違点は重要ではないと主張する。
しかし,原告作品と被告作品は,その素材の差異により,原告作品が自然界に存在する花のような柔らかく陰影に富んだ印象を与えるのに対し,被告作品は,均一にむらなく光り,クリスタルのようなまばゆい輝きを放つものであって,看者が受ける印象は大きく異なるというべきであり,原告作品の特徴により生まれた光の表情をより強く感じさせるかどうかの差異にすぎないということはできない。
また,原告らが原告作品以外の作品を制作する上でプリズムシートを使用したことがあり,あるいは,プリズムシートが素材として一般的なものであるとしても,そのことは本件における翻案該当性の判断に影響するものではなく,上記結論を左右しない。
() 原告らは,相違点G及びIに関し,看者が感得できるのは、ほぼ大両刃部の形状のみであり、両刃部の面の向きが下斜め方向に振れ,小エレメントの両刃部の下方に大エレメントの小両刃部が設けられているとしても,鋭く尖った立体的な形状とは認識されず,仮にそのように認識されるとしても,それは原告作品の特徴により生まれた鋭利な外観をより鋭利に見せる工夫にすぎないので,上記各相違点は重要ではないと主張する。
しかし,被告作品の写真や乙16によれば,被告作品の大エレメントの大両刃部及び小両刃部並びに小エレメントの両刃部は,外部から見ることができるものと認められ,看者が感得できるのは、ほぼ大両刃部の形状のみであるということはできない。
また,原告らは,原告作品の特徴である鋭利な外観をより鋭利に見せる工夫にすぎないと主張するが,原告作品の外観は,むしろ,花冠が集合したようなボール状の丸みを帯びたものであって,鋭利ということはできないことは前記判示のとおりである。
() 原告らは,被告作品の特徴Y①~Y③に関し,特徴Y①(立体感)及びY②(鋭利な外観)は,原告作品がもともと有している特徴であり,特徴Y③(光の明るさの均一性)も,エレメント素材をプリズムシートで制作した原告作品がもともと有している特徴であって,原告作品に依拠して制作する過程で加えた枝葉末節の変更にすぎないと主張する。
しかし,被告作品が有する特徴Y①~Y③が,原告作品がもともと有している特徴であるということができないことは,前記判示のとおりである。
() 以上のとおり,原告らの上記各主張はいずれも理由がなく,採用し得ない。
(6) したがって,被告作品から原告作品の本質的特徴を直接感得することができるということはできないので,被告作品は原告作品の翻案には該当せず,また,原告らの同一性保持権を侵害するものであるということもできない。
3 結論
以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,よって,主文のとおり判決する。