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著作権判例セレクション

【編集著作物】カーテン用副資材等のカタログの編集著作物性を認めた事例

平成70328日大阪地方裁判所[平成4()1958]
2 本件カタログは全体として編集著作物に該当するか
証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件カタログは、カーテン用副資材の製造販売を業とするパロマの商品を紹介するものであって、掲載するパロマの商品の全体的な配列について、①パロマがカーテンフックの製造メーカーから出発したものであることから、他の副資材メーカーに比べてフックの商品のバリエーションが多いことを考慮して、カーテンフック類がカタログの冒頭にくるように配列され、②トリミング材については、レーストリムを中心として白いレース系のトリミング材とその他の着色されたフレンジ(トリミング材)とを区別し、前者を「レース・トリム」として一章を設け、後者をタッセルと一体とし「フレンジ&タッセル」の一章にまとめる等の工夫がされていること、さらに、各章の冒頭部分には当該章において紹介する商品の機能、用途、特質、商品開発の基本思想をまとめた短文を配し、個々の商品の紹介部分にも商品を実際に使用する際の使用方法や留意点について説明文を付していること、また、ギャザーテープ及びバルーンテープの写真について、別々に撮影したギャザーテープ又はバルーンテープの写真とこれを使用したカーテンの写真とを上下二段にあるいは左右に並べて、ギャザーテープ又はバルーンテープの形状とその具体的使用方法が一目瞭然に理解できるように工夫していることが認められる。
以上の点から、本件カタログは、編集物でその素材の選択、配列によって創作性を有するから、編集著作物に該当するものというべきである。
3 本件カタログは全体として一個の著作物に該当するか
原告は、一面編集著作物としての性格を有しながら、他面一個の著作物とも評されるような著作物が存在するとし、①本件カタログは、多数の写真、図版及び説明文によって構成されているが、本来カタログとしての一貫した制作目的に従って構想されたものであり、個々の写真、図版及び説明文は、その目的に従って選択、配列されたものに過ぎないこと、②本件カタログは、単なる商品の紹介・説明を目的とするにとどまらず、全体として、本来地味な商品であるカーテン用副資材を楽しくかつ豪華に理解させようとする制作者の意図のもとに、例えば、各章冒頭の頁には、流れるような渋いカーテン布地の前面に美しい花の写真と当該章内で紹介されている代表的副資材商品をアレンジした写真を配するとともに、商品名をゴシック体の英語で表示して見る者に優雅さを感じさせるようにし、各商品(ないし商品群)を紹介する場合にも背景等のアレンジに工夫を凝らし、個々の商品を撮影する際にも様々な工夫を凝らしていること、③さらに、各章の冒頭部分には、当該章において紹介する商品の機能、用途、特質、商品開発の基本思想を要領よくまとめた短文を配し、個々の商品の紹介部分にも、商品を実際に使用する際の使用方法や留意点について説明文を付していることを理由に、本件カタログは、単に個々の写真や図版を選択、配列した編集著作物であるだけではなく、全体として制作者である原告の思想、感情を創作的に表現した著作物であるといえると主張する。
しかし、原告主張のように一面編集著作物としての性格を有しながら他面一個の著作物とも評されるような著作物が存在するかどうかはともかく、原告の主張する本件カタログにおける右①ないし③の工夫は結局のところ素材の配列又は選択の創作性に過ぎないというべきであり、本件カタログはその性質上個々の写真に示された商品を印象づけることを意図して制作されたものであって、ストーリー性をもった読み物とまでいうことはできないから、本件カタログ全体が、編集著作物としての性格に加えて、全体として一個の創作性ある著作物としての性格を有するということはできない。
したがって、本件カタログ全体を一個の著作物としてその著作権侵害を理由とする原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく理由がないことになる。