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著作権判例セレクション

【言語著作物】 歴史教科書集の記述の著作物性/歴史教科書を「結合著作物に当たる」とした事例

平成210825日東京地方裁判所[平成20()16289]
(2)本件記述の著作物性
著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」をいう(著作権法2条1項1号)。
本件記述(本件書籍において,各単元において図版や解説文を除外した本文部分や,各コラムにおいて図版や解説文を除外した部分)は,特定のテーマに関して,史実や学説等に基づき,当該テーマに関する歴史を論じるものであり,思想又は感情を創作的に表現したものであって,学術に属するものであるといえる。
この点,本件教科書(本件書籍)が,中学校用歴史教科書としての使用を予定して作成されたものであることから,その内容は,史実や学説等の学習に役立つものであり,かつ,学習指導要領や検定基準を充足するものであることが求められており,内容や表現方法の選択の幅が広いとはいえないものの,表現の視点,表現すべき事項の選択,表現の順序(論理構成),具体的表現内容などの点において,創作性が認められるというべきである。
なお,本件書籍は,上記(1)で認定したとおり,82個の単元,多数のコラムや課題学習等から成るものの,各単元やコラムは,本件書籍の他の部分とは分離して利用することも可能であり(本件教科書が,中学校用歴史教科書として使用することが予定された書籍であるからといって,各単元やコラムが中学校用歴史教科書としてしか利用することができないわけではない。),また,各単元やコラムは,特定のテーマに関連する本文の記述(側注を含む),関連する写真,地図,図表やこれらの解説文等で構成されているものの,本件記述(各単元において図版や解説文を除外した本文部分やコラムにおいて,図版や解説文を除外した部分)を,写真,地図,図表やこれらの解説文等とは分離して利用することも可能であるから,本件書籍はこれらの各著作物が結合したいわゆる結合著作物に当たるというべきであり,これらの各単元やコラムが一体として著作権法2条1項12号の「共同著作物」に当たると解することはできない。