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著作権判例セレクション
【著作者】紛争地域で撮影した動画の著作者が問題となった事例
▶令和4年3月28日知的財産高等裁判所[令和3(ネ)10085]
(3)
本件動画の著作者について
控訴人X1は、前記のとおり主張するところ、引用に係る原判決における説示のとおり、本件動画は、被控訴人が報道番組等において使用してもらうことを企図して撮影されたものであり、イエメンの難民キャンプや反政府勢力の支配都市等の状況が撮影され、また、被控訴人が現地の住民とのやり取りを取材している様子や、被控訴人がその状況についてカメラに向かって日本語で語りかけている様子等が収められているものである。
被控訴人がイエメンでの入国経験や取材経験もなかったのに対し、控訴人X1は、イエメンでの入国経験があり、難民キャンプも訪れたことがあり、案内人のBとは以前から面識があることから、控訴人X1が、被控訴人から、相談を受けて、訪問先や関係情報等について教示し、また、被控訴人が現地で語っている様子を被控訴人の持参したビデオカメラで撮影したことがうかがわれるものの、本件動画の撮影目的に加え、被控訴人が紛争地域の取材、撮影を行うフォトジャーナリストとして活動していたことからすると、控訴人X1が、訪問先を決定し、撮影する位置を指示したり、撮影中の被控訴人の発言や撮影内容について決定していたとはおよそ考え難く、控訴人X1は本件動画の撮影に当たっての情報提供や補助的な役割を果たしたのにすぎないというべきであるから、控訴人X1が本件動画の全体的形成に創作的に寄与したものと認めることはできない。
したがって、この点に係る控訴人X1の主張は採用できない。