Kaneda Legal Service {top}
著作権判例セレクション
【言語著作物】宅建試験の受験指導書籍の「一覧表」等の著作物及び侵害性が争点となった事例
▶平成6年07月25日東京地方裁判所[平成4(ワ)3549]
(注) 本件は、原告(宅建試験を含む国家試験の受験指導の企画・制作・提供・講義・出版等を業とする会社)が、被告ら(原告同様に国家試験の受験指導等を業とする会社等)の出版販売等する被告書籍に掲載されている別紙目録記載の表が、原告の原告書籍中の別紙記載の表について有する著作権(複製権)及び著作者人格権を侵害しているとして、被告らに対し、著作権法115条の規定に基づき謝罪広告の掲載、著作権侵害による損害賠償金等の支払いを求めた事案である。
一 争点一(原告各表の著作物性)について
1 法令は、その性質上国民に広く開放され、伝達され、かつ利用されるべき著作物であり、そのため著作権法13条1号においても、憲法その他の法令は著作者の権利の目的とならない旨規定されている。したがって、このような性格を有する法令の全部又は一部をそのまま利用したり単に要約したりして作成されたものは著作物性を取得しないというべきである。このような観点に留意しつつ、以下、原告各表の著作物性、並びにこれが認められる場合に更に被告各表が原告各表の著作権を侵害しているかどうかについて検討する。
2 原告表(1)について
(一) 原告表(1)は、別紙対照表の原告表(1)のとおりであり、宅建業法8条2項の規定により、建設省及び都道府県にそれぞれ備えられている宅地建物取引業者名簿に登載しなければならない事項及び右事項のうち変更があった場合に同法9条の規定により建設大臣又は都道府県知事に届け出なければならない事項を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(1)は法文の内容を法令記載の順番に従い、引用条文のあるものはその引用を含めて簡潔に要約し、条文のとおりの順に配列したにすぎないものであり、表形式でまとめた点、届出の要否を○、×の符号で表現した点を含めて、誰が作成しても表によってまとめようとする限り同様の表現となるものと思われるから、原告表(1)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない。
(三) 原告は、原告表(1)は、宅建業法8条2項と9条から名簿登載事項と変更の届出を選び出して一つの表にまとめ、それによって両者を一度に、かつ体系的に容易に理解できるようにしたものであり、この構成は原告により工夫されたものであるから著作物性がある旨主張するが、宅建業法8条2項は9条中で引用されており、内容的にも名簿登載事項とその変更の届出で関連していることは自明であり、これらを一つの表にまとめたことに創作性は認められず、また、これを表現した右認定のような一覧表も、表による表現としては典型的な形式であって、創作性は認めることができない。
また、原告は、原告表(1)には、名簿登載事項の整理に原告の創造がある旨主張するが、前記のとおり、原告表(1)における名簿登載事項欄の記載は、法令の一部をそのまま利用したり単に要約したりしたものであって、創作性を認めることができない。
更に、原告は、宅建業法9にかかる変更の届出期間に関する法文を一目でわかるように原告表(1)の欄外に、他の部分と調和がとれるように簡潔にエクスクラメーションマークをもって示しているから著作物性がある旨主張するが、右部分は、一覧表とは別に、同法9所定の変更の届出についてのまとめである以上、欠くことのできない同条の届出期限についての部分を要約して記載したにすぎず、エクスクラメーションマークを加えたとしても創作性を認めることはできない。
3 原告表(2)について
(一) 原告表(2)は、別紙対照表の原告表(2)のとおりであり、宅建業法18条の規定による宅地建物取引主任者の登録を受けている者についての、同法21条の規定による都道府県知事への届出義務の発生事由及び届出義務者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(2)は、法文の内容を引用条文も踏まえて、法文の字義どおり明らかにしたものであり、またその配列も、複数の事由の、ある本人が届出義務者となる場合を一つの欄にまとめて配列すれば、誰が行っても同じような表現になると思われ、原告表(2)の表現形式についても表現内容についても著作権法によって保護される著作物としての創作性を認めることができない。
(三) 原告は、原告表(2)について、宅建業法21条は1号以外は、18条中、1項1号又は3号から5号の2号までと、18条1項2号を引用するが、両者では届出事由及び届出義務者が異なり、これを説明すると複雑になり、初学者にとって理解が容易でないので、法文とは異なる簡潔な原告表(2)記載の文言による記述により、法文の意味するところを示して表にまとめたものであって、原告の精神的労苦による成果物である旨主張するが、条文のとおりではないものも、要点を示す「死亡」、「禁治産」等の言葉で端的に表現したり、単に要約して簡潔な文言にしたにすぎないもので創作性は認められず、また、一覧表とした点も表による表現としては典型的な形式であって、創作性を認めることができない
また、原告は、原告表(2)は、(ア)項目について、届出義務者ごとに枠でくくり、一目で届出の必要な事項と届出義務者がわかるようにしていること、また、21条の3号の記載に関しては、一文で示されているところを後見人と保佐人の二つの枠に分け、法概念につき未だ理解の充分でない初学者にわかるように18条2号に示された禁治産者の届出義務者は前者、準禁治産者については後者と明示していること、(イ)項目の順序について、21条の号の順ではなく、よりわかり易くするように届出義務者に着目し、相続人、後見人、保佐人、本人の順(すなわち21条、1号、3号、2号の順)としていること、(ウ)21条2号で引用する18条1項1号又は3号から5号の2は、18条の但書が対象とする1項各号に該当する者が都道府県知事の登録を受けることができないとする不許可事由の形で示されているので、21条の届出事由については、18条の不許可事由の記載を若干解釈で補った上、①ないし④の項目にまとめ、それをそれぞれ原告の言葉で簡潔に示していること、(エ)原告表(2)の⑤は、法18条5号及び5号の1の長い条文を合体させて要約していることから、原告の精神的労苦に基づく独創的な記述であって、著作権法上保護されるべきものである旨主張する。
しかしながら、右主張の点を考慮しても、宅建業法21条とそこに引用された18条1項各号の条文を単に要約整理して原告表(2)の程度にまとめたことに創作性は認められない。
4 原告表(3)について
(一) 原告表(3)は、別紙対照表の原告表(3)のとおりであり、都市計画法15条1項の規定による都市計画の決定権者に関し、各種の都市計画とその決定権者を一つの表にまとめたもので、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(3)は、都市計画法が数か条にわたって定める都市計画で定めるべき区域、地域、地区等の内主要なものを選択し、条文の順序にとらわれず、独自の観点から分類、配列し、これに対応する決定権者を同法と同法施行令の定めの中から拾い上げて、一覧表の形式にまとめて表現したもので、法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる。
(三) 被告らは、原告表(3)は、都市計画法の条文に明記された用語と、それに対する法律上の決定権者を並べたものにすぎず、これを表に記載すれば、誰が行っても原告表(3)と同一になる程度のものであるから著作権の対象として保護されない、また原告表(3)は、先行出版物記載の表と同じものであって、表の体裁が原告表(3)は表全体を線で囲んでいるところが異なるが、内容に影響のない単純な形態の違いにすぎず、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない旨主張する。
しかしながら、原告表(3)の内容は法令の内容を単に要約したというものではないし、被告らが指摘する先行出版物である(証拠)の記載内容と原告表(3)とを対比すると、都市計画法7条ないし12条の5に示されている都市計画の種類の選択、分類、配列が相違していることは明らかであって、誰が作成しても原告表(3)と同一になるものではなく、被告らの主張は、理由がない。
5 原告表(4)について
(一) 原告表(4)は、別紙対照表の原告表(4)のとおりであり、都市計画法29条の規定及びこれに関連する規定(同法附則4項、同法施行令19条、20条、同法施行令附則4条の2)により開発行為をしようとする場合に都道府県知事の許可が必要かどうかについて、開発行為の内容と都市計画区域との関係での都道府県知事の許可の要否を一つの表にまとめたものであり、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(4)は、都市計画法の本則と附則、同法施行令の本則と附則にわたって規定された都市計画区域ごとの開発行為についての都道府県知事の許可の要否を一覧表の形式にまとめて表現したもので、基本的に法令の規定内容を出るものではないとはいえ、一定の主題についての複雑な法令の規定内容の骨子をわかりやすく整理要約した点に創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物であると認められる。
(三) 被告らは、都市計画法29条の内容を図表化しようとすれば、項目分けとしては、都市計画区域別の項目分けと許可の不要な開発行為別の項目分けの二つの観点があるのは明白であり、これらの二つの観点から都市計画法29条の内容を図表化すると、都市計画区域別の項目分けとしては区域外をも加えて四個、許可の不要な開発行為別の項目分けとして五個を対置させた表となるのは当然であって、原告表(4)は、このような必然的な条文の解釈をそのまま表にしたにすぎず、特に表の内容に新規性や創造性があるわけではない旨主張する。
しかしながら、都市計画法29条1号ないし11号を五項目に分けたり、各項目毎の法令の内容を原告表(4)のように表現することは当然のこととは認められず、被告らの右主張は、理由がない。
また、被告らは、原告表(4)は、先行出版物と同じものであって、原告表(4)が許可の必要なケースと不要なケースを一つの表にまとめている点は特に工夫を要するものではなく、したがって、右先行出版物を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない旨主張する。
しかしながら、被告らの指摘する先行出版物である(証拠)と原告表(4)とを対比すれば、都市計画区域の関係の分類、一覧表による配列の表現形式において相違していることは明らかであって、被告らの右主張は、理由がない。
6 原告表(5)について
(一) 原告表(5)は、別紙対照表の原告表(5)のとおりであり、建築基準法53条1項、同法施行令2条1項2号の規定によって定められる建ぺい率を算定するための建築物の建築面積の計算方法の説明図であり、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(5)は、建ぺい率計算の基礎となる建築面積を算定するに当たって注意すべき建築基準法施行令2条1項2号の「建築物…の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものである場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。」との規定の要点を説明するためにそれなりに工夫創作された略図と認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三) 被告らは、原告表(5)は、従来から宅建試験の受験指導の書籍で使われていた一般的な図を改変したものにすぎず、それ自体を一個の著作物といいうるだけの創造性を有するものではない旨、原告表(5)は、先行出版物に記載されている「建築面積の算定方法(令2条2号)」と題する二個の表の合体にすぎず、右先行出版物記載の表の模倣、改変したものである旨主張する。
しかしながら、(証拠)に記載されている二つの図と原告表(5)とを対比してみると、前者は、建築基準法施行令2条1項2号中の「(地階で地盤面上一メートル以下にある部分は除く)」との部分及び軒、ひさし等で一メートル以上突き出たものである場合を説明する図と、建築物自体の二階以上の部分がせり出している場合を説明する図とからなるのに対し、後者は一つの図であること、前者では地上三階地下一階の建物と地上三階の建物が描かれているのに対し、後者では二階建ての建物が描かれていること、両者は建物の出入口と窓との位置関係が相違していることなどの相違点があって、後者と前者は類似するものとは認められず、また原告表(5)が従来から宅地建物取引主任者の受験指導の書籍で使われていた一般的な図を改変したものと認定するに足りる証拠もなく、被告らの右主張は、理由がない。
7 原告表(6)について
(一) 原告表(6)は、別紙対照表の原告表(6)のとおりであり、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項を適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類して、右各項目につき簡潔に要点を列挙し、一つの表にまとめたものであり、その表現は、次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(6)は、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する複雑な法文の内容を、受験対策として必要な項目毎に条文の枠を越えて整理し、簡潔な言葉で言い換え、一覧表にまとめた点において原告の創作が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三) 被告らは、欄の作成方法、従って分類方法についても、法文を前提とする限り、素直にまとめれば原告表(6)のようになるのであって、原告表(6)には創造性は認められず、かつ、仮に若干の創造性が認められるとしても、著作物としての保護に値する程度には至らない旨主張する。
しかしながら、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項をまとめれば必然的に原告表(6)のような表現形式及び表現内容になるものではなく、作成者の考え方によって、多種多様の右法条の建築協定に関する事項を分類し、要約し、配列することが可能であると認められるから、被告らの右主張は、理由がない。
8 原告表(7)について
(一) 原告表(7)は、別紙対照表の原告表(7)のとおりであり、国土利用計画法27条の2及び関連法令に規定された監視区域の指定手続を時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、国土利用計画法二七条の二に示された監視区域の指定手続きの要点を六個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べているというもので、その内容は次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(7)は、国土利用計画法27条の2、27条の5及び準用される同法12条に規定された監視区域の指定手続及び指定後の調査に関する事項について、準用された条文を合わせて、手続の流れに沿って整理して法文の内容を簡潔に要約し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法により保護される著作物と認められる。
(三) 被告らは、国土利用計画法27条の2及び同条が準用する同法12条に記載した行政手続を時系列に従って並べると、①(土地利用審査会、関係市町村長の意見聴取)、②(知事による区域、期間の決定)、③(公告)、④(公告による指定の効力発生)、⑤(内閣総理大臣への報告、関係市町村長への通知、必要な措置)、⑥(調査)の順となる。これを図表化しようとすれば、右①ないし⑥の項目を一列に並べるしか方法がなく、縦書き横書きを別にすれば、誰が試みても同一図表にならざるを得ない、このことは、行政手続規定は、手続の明確さが要求されるために、規定文言が明確かつ覇束性を有し、その解釈も一義的にならざるをえないことに思いを致せば当然のことであり、原告表(7)は、条文そのものを簡略化して表現したにすぎず、表の内容に新規性、創造性が介入する余地はなく、原告表(7)には著作物性がない旨主張する。
しかしながら、国土利用計画法27条の2及び同条が準用する同法12条の規定における監視区域の指定手続に関する事項について、どのように選択し、どのように分類し、どのように法文の文言を要約し、どのような形式で配列するか多種多様であり、また、指定後の調査に関する事項をもまとめて記載するか否かは考え方の分れる点であり、更に原告表(7)が条文そのものを簡略化して表現したにすぎないものでないことは明らかであるから、被告らの右主張は、理由がない。
9 原告表(8)について
(一) 原告表(8)は、別紙対照表の原告表(8)のとおりであり、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを時系列的に図表化したものであり、その表現形式は、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の要点をブロック化し、時系列的に関連するブロック間を実線で結び、上から下へ列記しているもので、その内容は次のとおりである。
(略)
(二) 右認定の事実によれば、原告表(8)は、国土利用計画法23条ないし27条、15条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続及びその後の措置について、必ずしも条文の枠にとらわれずに場合分けして整理し、簡潔な文言で要約し、ブロック化して配列したものであって、創作性が認められ、著作権法で保護されるべき著作物と認められる。
(三) 被告らは、国土利用計画法23条ないし27条に規定されているところの土地に関する権利の移転等の届出以降の手続の流れを図表化するならば、何人が試みても原告表(8)のようにならざるをえず、後は微細な表現方法の問題であり、行政手続規定は、その性質上、規定文言及びその解釈が明確性を要求され、原告表(8)は、その明文規定と、そこから当然に導かれる解釈を図表化したものにすぎず、何らの学術性、独創性もない旨主張する。
しかしながら、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続に関する事項について、どのように選択し、どのように分類し、どのように法文の文言を要約し、どのような形式で配列するか多種多様であり、何人が試みても原告表(8)のようにならざるをえないとは認められず、被告らの右主張は、理由がない。
また、被告らは、原告表(8)は、先行出版物の「土地に関する権利の移転等の届出」と題する表と同じものであり、したがって、右先行出版物記載の表を模倣、改変したものであり、原告が著作権を取得することはありえない旨主張するが、被告らの指摘する先行出版物である(証拠)の「土地に関する権利の移転等の届出」と題する表と原告表(8)とを対比すれば両者の形式、表現が相違していることは明らかであるから、被告らの右主張は、理由がない。
以上によれば原告表(1)、(2)については著作物とは認められないから、これらについては複製の点について判断するまでもなく、著作権侵害と認めることができない。
二 争点二(被告表(3)ないし(8)はそれぞれ原告表(3)ないし(8)を複製したものか。氏名表示権、同一性保持権の侵害があるか。)について
被告表(3)ないし(8)は、別紙対照表の被告表(3)ないし(8)のとおりである。
1 原告表(3)と被告表(3)との対比
(一) 原告表(3)と被告表(3)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
(略)
(二)以上によれば、原告表(3)と被告表(3)は、共に都市計画法15条1項所定の都市計画の決定権者を整理して一覧表にまとめたものであるから、区域、地区、地域等の表現、決定権者が同じになるのは当然であり、その中で全体的な表現形式、都市計画の分類、配列等において右のように相違している以上、被告表(3)は、原告表(3)の複製とは認められない。
2 原告表(4)と被告表(4)との対比
(一) 原告表(4)と被告表(4)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
(略)
(二) 右(一)認定の事実によれば、原告表(4)と被告表(4)との記載内容は、同一か極めて類似している点もあるが、共に都市計画法29条及び関連する規定に定められた、開発行為の許可の要点を整理して一覧表にまとめたものであるから内容に共通する点があるのは当然であり、その中で、全体的な表現形式、内容について右のような相違がある以上、被告表(4)は原告表(4)の複製とは認められない。
3 原告表(5)と被告表(5)との対比
(一) 原告表(5)と被告表(5)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
原告表(5)も被告表(5)も、建築基準法53条1項、同法施行令2条1項2号の規定によって定められる建ぺい率を算定するための建築物の建築面積の計算方法の説明図である。
原告表(5)も被告表(5)も、二階建ての建物の粗略な正面図を上に、その平面図を下に配したものであり、その表現は、被告表(5)では樹木が描かれていない点、バルコニー様のものの部分と出入口の部分、建物の投影図部分に付された点描の密度がやや粗である点、建物の投影図中に「平面図」の文字がない点、平面図の左下に敷地面積等の文字のない点を除けば、建物の形態、窓の数、形態、位置、説明のための補助線の引き方や注記、平面図の左下の意味不明の小さな横長の長方形が記載されている点まで共通している。
(二) 右(一)認定の事実によれば、被告表(5)は、原告表(5)と著作物としての同一性を損なわない程度にまで類似しているものと認められる。
4 原告表(6)と被告表(6)との対比
(一) 原告表(6)と被告表(6)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
原告表(6)も被告表(6)も、建築基準法69条ないし77条に規定された建築協定に関する事項を適用区域、協定の主体、協定の内容、手続、協定の効力、協定の変更、協定の廃止、一人協定の項目に分類して、右各項目につき簡潔に要点を列挙し、一つの表にまとめたものである点で共通している。
原告表(6)では、前記認定のとおり、上辺左端付近に「公式39」との記載のある長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、被告表(6)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・建築協定のまとめ」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められている。
また、原告表(6)では、「建築協定」との見出しがあるのに、被告表(6)にはこれがない。
一覧表の表現内容は、原告表(6)と被告表(6)は、ほぼ同一であり、わずかに、原告表(6)では、「協定の主体」の右欄中の「借地権者」の記載の下には、建築基準法六九条所定の地上権又は賃借権のうち除外される場合を要約して「(臨時設備・一時使用を除く)」と記載しているのに対し、被告表(6)ではこれがない点で相違するのみである。
一覧表の欄外の記載については、原告表(6)では「一人協定」の項目についての補注を記載しているのみであるのに対し、被告表(6)では、ほぼ同文の一人協定の項目についての補注の外に、「協定の効力」の項目についての補注がある点で相違している。
(二) 右認定の事実によれば、原告表(6)と被告表(6)とは前記のような相違点はあるものの、その表現は著作物としての同一性を損なわない程度にまで類似しているものと認められる。
5 原告表(7)と被告表(7)との対比
(一) 原告表(7)と被告表(7)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
原告表(7)も被告表(7)も、国土利用計画法27条の2及び関連法令に規定された監視区域の指定手続を時系列的に図表化したものである。
被告表(7)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・監視区域の指定」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、原告表(7)では、これがない点、被告表(7)では、右枠内に、まず、国土利用計画法27条の2第1項に規定される都道府県知事の監視区域の指定の権限を、法文の要点を抜粋して記載しているのに対し、原告表(7)ではこれがない点、被告表(7)では、右枠内の右下に適用法条(国土利用計画法27条の2のみ)を簡潔に記載しているのに対し、原告表(7)ではこれがない点で相違している。
他方、原告表(7)と被告表(7)中の国土利用計画法27条の2に示された監視区域の指定手続きの要点を六個のブロックにまとめ、これを時系列的に上から下へ並べた部分は、そのような整理の形式が共通しているばかりか、その記載内容まで原告表(7)と一言一句同一である。
(二) 右認定の事実によれば、原告表(7)と被告表(7)中の六個のブロックからなる部分は、ほぼ同一であると認められる。
6 原告表(8)と被告表(8)との対比
(一) 原告表(8)と被告表(8)とを対比すると、次のとおりの事実が認められる。
原告表(8)も被告表(8)も、国土利用計画法23条ないし27条に規定されている土地に関する権利の移転等の届出手続の流れを時系列的に図表化したものである点で共通している。
被告表(7)では、上辺左側に横長の小さい長方形を有し右長方形の中に「要点・届出の手続のまとめ」との記載のある大きな長方形の枠内に全ての記載が収められているのに対し、原告表(8)ではこれがない点、被告表(8)では、時系列的に関連するブロック間を矢印で結んでいるのに対し、原告表(8)では、時系列的に関連するブロック間を実線で結んでいる点、原告表(8)では、ブロック中の記載に、適宜、適用法条の数字を示しているのに対し、被告表(8)ではこれがない点で相違している。
他方、原告表(8)と被告表(8)は、一つのブロックの中にまとまる事項、手続きの流れの分け方が共通である上、各ブロック内の記載の表現が同一又は著しく類似している。
(二) 右認定の事実によれば、原告表(8)と被告表(8)との類似の程度は、同じ国土利用計画法23条ないし27条の規定を図表化したものであることから当然に予想される類似性を遥かに超えて類似しているものと認められる。