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著作権判例セレクション
【写真著作物】 写真(座喜味城跡を地上から撮影した写真)の創作性
▶平成20年09月24日那覇地方裁判所[平成19(ワ)347]
4 本件原写真18の創作性(争点2のうち本件原写真18に係る部分)について
前記3のとおり,本件各原写真のうち,本件原写真18を除く写真,すなわち本件在籍中各原写真に係る請求は,原告が著作者人格権等を有せず理由がないから,以下,本件原写真18についてのみ判断する。
本件原写真18は,沖縄県内の城跡の1つであり,世界遺産にも登録されている座喜味城跡を地上から撮影した写真であるところ,その構図は大略,2層になっている石積みの城壁のうち下層の城壁が画面の概ね下半分を占め,また上層の城壁が画面の中央付近から6分の1程度の高さを占め,画面の上部3分の1強の高さの部分を背景たる青空が占めており,かつ下層の城壁の一部が画面中央付近から画面下端に向けて右手方向にカーブし,この城壁のカーブしている部分が影になっているというものであって,概ねその全部が明るくなっている上層の城壁とは異なり,上記の影になっている部分が下層の城壁に明暗のコントラストを作り,城壁のカーブを強調する効果をもたらしているものである。
ここで,被告東亜の原告以外の従業員が平成14年7月に撮影した座喜味城跡の写真(乙イ65号証の1)は,本件原写真18とほぼ同様の位置から,ほぼ同様のアングルで撮影されたものであるところ,上記写真は,本件原写真18とは,背景となる青空が画面に占める割合,上層の城壁の左右方向の位置,下層の城壁で囲まれる地面部分の緑色の草木の量が異なるほか,上記写真が下層の城壁の明暗を作ったものでない一方,前記のとおり,本件原写真18では下層の城壁の明暗をあえて作っている点が大きく異なり,したがって城壁のカーブを強調するか否かが大きく異なっている。
上記のとおり,同じ座喜味城跡をほぼ同じ位置及びアングルで撮影しても,相当印象が異なる写真が作成されている点にかんがみると,本件原写真18は機械的に撮影されたごくありふれたものである等とは到底いうことができず,本件原写真18は,その表現の仕方につき,原告の思想ないし感情が創作的に反映された,美術の著作物に当たるというべきである。
なお,本件原写真18は,乙イ65号証の1の写真に比して,ピントが若干甘いものの,このことの一事をもって本件原写真18の創作性を否定することはできない。