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著作権判例セレクション
【法113条11項】法113条11項の法意
▶平成25年3月25日東京地方裁判所[平成24(ワ)4766]▶平成25年09月10日 知的財産高等裁判所[平成25(ネ)10039]
[控訴審]
2 名誉声望毀損行為の成否(争点(7))について
著作権法113条6項[注:現11項。以下同じ]は,著作者の名誉声望を害する態様での著作物利用行為に対して,著作者人格権侵害行為とみなすものであるところ,前記のとおり,被告記述部分は,控訴人の著作物と表現上の類似性を欠き,元の著作物の創作的表現は感得できないのであるから,控訴人の著作物を利用したとはいえない。したがって,被告記述部分について著作者人格権の侵害は成り立たず,同条項適用の前提を欠いている。また,著作者の名誉声望とは,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価をいい,人が自己の人格的価値について有する主観的な評価は含まれないと解されるところ,被告記述部分に,控訴人の社会的評価を低下させるものが含まれているということはできない。著作権法113条6項の名誉声望毀損行為をいう控訴人の主張は採用できない。
3 著作権に基づかない人格的利益侵害による不法行為の成否(争点(8))について
控訴人は,本件インタビュー部分が控訴人の創作活動の成果物である以上,その内容が第三者により無断で改変されないことにつき人格的利益があり,その侵害としての不法行為が成立する旨主張する。しかしながら,控訴人のそのような利益は,著作権法が規律の対象とする利益と同一であるということができ,保護された利益が共通であるから,著作権侵害ないし著作者人格権侵害が成立しないのに,別途不法行為が成立することはない(最高裁平成23年12月8日第一小法廷判決参照)。控訴人は,人格的利益の内容について,「名誉権,プライバシー権又はこれに類似した人格的利益」とも主張しているところ,名誉権侵害が成立しないことは前記に述べたとおりであり,その他の利益侵害についてはその内容が明らかとされていない。
控訴人は,結局のところ,被控訴人が本件インタビュー部分を正確に引用しなかったことを問題としているものと解されるが,被告記述部分は,本件インタビュー部分における表現を感得できない表現形式で記述したものであり,著作権を侵害する態様の記述とはなっていないのであるから,被告記述部分の作成をもって,不法行為が成立するということはできない。また,控訴人が,被控訴人の行為が,インタビューの内容等について,個人的・社会的・学術的な評価や批判を控訴人に向ける記載態様であり,社会的相当性を欠く旨主張するが,被告記述部分からそのような内容を読み取ることはできないし,控訴人の主張する被控訴人の不当な意図については,いずれも控訴人の陳述のほかに客観的な証拠を欠いており,採用することはできない。