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著作権判例セレクション
【映画著作物】社内教育用DVDの映画著作物性を認めた事例
▶令和3年7月20日東京地方裁判所[令和2(ワ)25092]
1 争点(1)(権利侵害の明白性)について
(1)
原告動画の著作物性
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告動画は,原告の業務上の感電事故防止のために必要な知識をコンパクトにまとめた動画であって,研修用動画として受講者が必要な知識を効率よく確実に身に付けることができるように,テーマに沿った説明,図示,アングル等の工夫を凝らすことにより著作者の思想等を創作的に表現したものであり,かつその内容がDVDに固定されたものと認められ(著作権法2条3項),著作権法2条1項1号の著作物に該当すると認められる。
(2)
原告動画の著作権の帰属
証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告動画は,平成20年11月頃,原告から委託を受けたJEKIからの再委託に基づき,TVCの従業員によりその職務著作として制作され,その著作権は,TVCに帰属した後,TVCとJEKIとの間の合意に基づき,JEKIによる対価の支払後である同年12月,TVCからJEKIに譲渡され,さらに,原告とJEKIとの間の昭和63年8月6日付け「広報・宣伝物,イベント等の制作及び実施に関する基本契約書」に基づく合意により,原告による対価の支払後である平成21年2月27日,JEKIから原告に譲渡されたことが認められるから,原告動画の著作権は,同日以降,原告に帰属することが認められる。
(3)
原告動画と本件投稿動画の同一性
前記前提事実のとおり,本件投稿動画は,本件発信者によりインターネット上のウェブサイトに投稿されたところ,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告の従業員は,令和2年5月9日,インターネット上のウェブサイト「niconico」に投稿されていた本件投稿動画を再生して視聴し,これが原告動画と同一であることを確認し,さらに,原告から本件投稿動画の削除申請を受けた同ウェブサイトの運営会社である株式会社ドワンゴは,本件投稿動画の内容を確認の上,上記削除申請に応じて本件投稿動画を削除したことが認められる。これらの事実によれば,本件投稿動画と原告動画とは同一であったと認めるのが相当である。
(4)
違法性阻却事由の不存在
被告は,著作権法30条以下に定める権利制限事由がいずれも存在しないことが明らかであるとはいえない旨を主張するが,本件全証拠を精査しても,原告動画に係る著作権を制限する事由の存在をうかがわせる証拠はない。
(5)
小括
したがって,本件投稿動画がインターネット上のウェブサイトに投稿されたことにより,原告動画に係る原告の著作権(複製権,公衆送信権)が侵害されたことは明らかである。