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著作権判例セレクション

二次的著作物の原著作物の著作者の利用許諾権

▶平成16521日東京地方裁判所[平成13()8592] ▶平成17830日知的財産高等裁判所[平成17()10009]
3 争点(3)(原告らの請求は,権利の濫用あるいは信義則違反か)について
(1) 被告は,キャンディ・キャンディ事件上告審判決の趣旨に従えば,二次的著作物ないし三次的著作物たるテレビ番組の原著作物の著作者たる原告らは,脚本の原作となった漫画の著作者等の他の著作権者と共同しなければ,被告に対して権利行使することはできないにもかかわらず,原告らが被告に対して他の著作権者と共同せずに許諾をするのは,権利の濫用であり,信義則違反であると主張する。
(2) しかしながら,被告の上記主張を採用することはできない。理由は次のとおりである。
著作権者は,それぞれ他人に対し,著作物の利用を許諾する権限を有しているのであり(著作権法63条1項),このことは二次的著作物の場合であっても変わりがない。したがって,二次的著作物の原著作物の著作者は,他の権利者と共同しなくても,それぞれ自己の著作権に基づく権利行使をなし得るものである。
被告は,キャンディ・キャンディ事件上告審判決の趣旨に照らすと,二次的著作物の原著作者は,当該二次的著作物の著作者を含む他の権利者と共同しなければ権利行使なし得ないと主張するものであるが,上記判決は,二次的著作物の著作者による当該二次的著作物の複製行為に関し,原著作物の著作者は,当該二次的著作物を合意によることなく利用することの差止めを求めることができる旨を明らかにしたにすぎず,二次的著作物の原著作物の著作者が単独で第三者に許諾権限を行使することができない旨を述べたものとは解されない。したがって,被告のこの点の主張を採用することはできない。
(3) 以上のとおりであるから,テレビ番組が二次的著作物ないし三次的著作物に該当する場合であっても,当該テレビ番組の著作物の原著作物の著作者らは,それぞれ個別に権利行使をすることが可能であるから,これと異なる前提に立って論旨を展開する被告の上記主張を採用することはできない。

[控訴審同旨]
4 判例・信義則違反(被告らの主張(3)
(1) 被告らは,最高裁キャンディ事件判決によれば,二次的著作物の原著作者は,当該著作物の著作者を含む他の権利者と共同しなければ権利行使なし得ないと主張する。しかし,上記判決は,二次的著作物の著作者による当該二次的著作物の複製行為に関し,原著作物の著作者は,当該二次的著作物を合意によることなく利用することの差止めを求めることができる旨を明らかにしたものであり,二次的著作物の原著作物の著作者が単独で第三者に許諾権限を行使することができない旨を示したものではない。したがって,被告らの上記主張は失当である。
(2) また,被告らは,原告らは脚本を二次的著作物とした場合の漫画家など,自らの著作物の原著作者等に対しては,同時再送信について使用料を支払っていないが,自ら原著作者の権利を侵害しながら,被告らに対する権利を主張するのは,権利の濫用,信義則違反として許されないとも主張する。しかし,原告らが脚本を二次的著作物とした場合の原著作者等に対して同時再送信について使用料を支払っていないとしても,そのことを理由に,原告らの被告らに対する本件各契約に基づく権利行使が権利の濫用ないし信義則違反になるということはできない。
被告らの上記主張も採用できない。