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著作権判例セレクション
【公表権】ライブハウスの関係者のみに配布されたDVD映像を「未公表」としなかった事例
▶平成23年10月31日東京地方裁判所[平成21(ワ)31190]
6 争点(2)-3 著作物3の著作者人格権(公表権)侵害の成否について
Yは,著作物3は,ロックバンドのライブ映像を収録したDVDの映画の著作物であるところ,ライブハウスの関係者のみに配布する趣旨で提供され,ファン等の一般向けに相当部数が提供されたものではないから,未公表の著作物に該当し,被告が,著作者人格権者である同原告の許諾を得ることなく,著作物3を複製し不特定人に頒布することにより,公衆に提供したことは,同原告の公表権(著作権法18条)を侵害すると主張する。
そこで,検討するに,著作権法18条は,「著作者は,その著作物でまだ公表されていないもの(その同意を得ないで公表された著作物を含む。・・・)を公衆に提供し,又は提示する権利を有する」と定めている。他方,著作物は,発行された場合において「公表」されたものとされ(同法4条1項),著作物の「発行」については,著作物の性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が,複製権(同法21条)を有する者によって作成され頒布された場合において,「発行」されたものとされる(同法3条1項)。
著作物3については,著作者であるYが複製頒布したものであるから,複製権者が著作者の同意を得て複製頒布したものであり,その複製頒布がその性質に応じ公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数に達している限り,公表されたものといえることになる。
前提となる事実のとおり,著作物3は,同原告が,被告による頒布行為の前に,ライブハウスの関係者にのみ記念として配布する趣旨で,同関係者らに複製頒布したものであり,その数量は少数であることが窺われるが,本件の著作物3のようなDVDに収録された「映画の著作物」については,作成頒布された複製物の数量が少数であったとしても,著作物の性質上,かかる場合においても,公衆の要求を満たすことができる相当程度の部数の複製物が複製頒布されたものと認められるから,同原告は,被告による頒布行為以前に,当該著作物を公表したと解するのが相当である。
したがって,著作物3について,被告が,同原告の許諾を得ることなく,著作物3を複製し不特定人に頒布したとしても,同原告の著作者人格権(公表権,同法18条)の侵害は成立しない。