【編集著作物】書籍の編集著作者性が争点となった事例
▶令和元年8月7日知的財産高等裁判所[平成31(ネ)10026]
2 争点1(控訴人が本件書籍の編集著作者であるか否か)について
(略)
⑵ 当審における補充主張に対する判断
ア 控訴人は,編集著作物において素材の選択,配列を決定した者は問題とならず,配列を行ったのは控訴人であるなどと主張する。しかしながら,控訴人の主張が,決定権限を持たずに素材の配列に関与した者,例えば,単なる原案,参考案の作成者や,相談を受けて参考意見を述べた者までがおよそ編集著作者となるというものであるとすれば,そのような主張は,著作者の概念を過度に拡張するものであって,採用することはできない。また,本件において本件書籍の分類項目を設け,選択された作品をこれらの分類項目に従って配列することを決定したのが被控訴人であることは先に引用した原判決認定のとおりであって,当審における控訴人の主張を踏まえてもかかる認定は左右されない。
イ また,控訴人は,被控訴人の前件訴訟における訴訟行為を捉えて,本件において被控訴人は自分自身が編集著作者であると主張することは許されないなどと主張する。
しかしながら,そもそも控訴人が前提とするところの,前件訴訟において被控訴人が編集著作者でないと自白し,本件書籍が編集著作物であれば控訴人が編集著作者であると認めたなどとする事実関係を裏付ける証拠はないから,控訴人の主張はその前提を欠くものである。かえって,控訴人による本件訴訟は,前件訴訟においてAが敗訴したことを受けて,原告を控訴人とするとともに,Aは控訴人の代理人であったなどとして,実質的には前件訴訟と同様の事実関係の主張を繰り返すものに過ぎず,前件訴訟の蒸し返しであるといわざるを得ない。
上記の控訴人の主張は採用できない。
⑶ 以上によれば,控訴人が決定し,Aに行わせたとする事務自体,本件書籍における素材の配列について,創作性を有する行為であったとはいえないから,控訴人が本件書籍の編集著作者であるとは認められない。
3 そうすると,その余の点につき判断するまでもなく,控訴人の請求を全部棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。