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著作権判例セレクション

【職務上作成する著作物の著作者】法人等の「発意」の意味

平成28224日知的財産高等裁判所[平成26()10117]
2 控訴人の主張について
控訴人は,信友又は中国塗料技研の「発意」は,控訴人が信友の取締役又は中国塗料技研の代表取締役として行ったものであり,控訴人と信友又は中国塗料技研との間の自己取引に当たるところ,1次訴訟の事実審の口頭弁論終結後に控訴人から信友及び中国塗料技研に対して民法114条の催告をしたにもかかわらず,信友及び中国塗料技研は自己取引の承認を拒絶したから,「発意」は無効であることが確定した旨主張する。
しかし,著作権法15条2項にいう法人等の「発意」とは,著作物の作成が直接又は間接に法人等の意図に由来するものであることであって,そもそも法律行為ではないから,旧商法265条1項の自己取引の問題が生じるものでないことは明らかであり,これに関する控訴人の主張は失当というほかない。
また,この点をおいても,控訴人の主張によれば,信友又は中国塗料技研による「発意」があった時点において,当該「発意」が,信友の取締役又は中国塗料技研の代表取締役である控訴人と,会社である信友及び中国塗料技研との間の自己取引に該当していたというのであるから,「発意」が自己取引であるとの控訴人主張に係る事実は,1次訴訟の事実審の口頭弁論終結前から存在しており,信友又は中国塗料技研の職務著作の成否という同社らの著作権の発生原因に内在する瑕疵であることになる。
そうすると,前記第2の2(3)のとおり,控訴人の民法114条の催告並びに信友及び中国塗料技研の回答が1次訴訟の事実審の口頭弁論終結後にされたものであるとしても,なお控訴人の上記「自己取引」に係る主張は,1次訴訟の事実審の口頭弁論終結前に主張することができたものであるといえる。
したがって,本訴において,控訴人が上記主張をすることは,1次訴訟の確定判決の既判力に抵触し許されないというべきである。