▶令和元年7月17日東京地方裁判所[平成31(ワ)99]
1 争点1(原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるか)について
⑴ 本件広告の著作物性について
前記のとおり,本件広告は,競艇予想サイトである原告サイトのトップページに掲載されたウェブ広告であり,別紙3著作物目録のとおり,「競艇予想のプロ集団
TOP TREND」という標題の下に,会議室のような場所でテーブルを囲んで着席している8名の人物を被写体とする本件写真が大きく表示されているほか,「徹底!当日主義!!徹底!現場主義!!」,「『勝てる!』『獲れる!』」といったキャッチコピーや説明文が表示されている。
そして,本件広告の構成要素のうち,少なくとも,本件写真については,被写体の選択,構図等において,撮影者の思想又は感情が創作的に表現されているということができるから,写真の著作物として認められるべきものであり,そうである以上,本件広告を全体として見た場合に一定の個性が発揮されていることは否定し難く,本件広告について,著作物性が認められるというべきである。
⑵ 本件広告の著作権者について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件広告は,原告サイトのトップページに掲載されていたものであり,本件広告の右下には,「Copyright 2004-2018」として,原告の名称の英語表記と合致する「Top
trend Co..Ltd.」との表示がされており,「Copyright」が著作権を意味する語として一般的に用いられ,原告の名称の英語表記も原告を示すものとして一般的に理解し得るものと認められるから,原告は,5 本件広告に,その名称が著作者名として通常の方法により表示されている者であるということができ,著作者と推定され,これを覆すに足りる証拠はないから,本件広告について著作権を有すると認められる。
⑶ 複製権侵害について
証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件画像は,原告サイトに掲載された本件広告をそのまま縮小して本件ウェブページに掲載したものであると認められ,本件広告の特徴的部分である本件写真を覚知することができる。
したがって,本件画像は,本件広告に依拠して再製したものであり,本件発信者は,本件画像の掲載に際し,本件広告を複製したものと認められる。
⑷ 違法性阻却事由の不存在(適法な引用の成否)について
ア 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件ウェブページは,競艇予想サイトの批評を目的とするものであり,本件画像は,原告サイトを批評するために掲載されたものと認められる。
しかしながら,批評の対象となる原告サイトを特定する必要があるとしても,そのために,原告サイトの名称やURLを掲載することに加えて,本件広告を複製し20 て掲載する必要性が高いとはいえないから,本件画像の掲載が,引用の目的上正当な範囲内のものであるとはいえない。
したがって,本件画像の掲載は,適法な引用(著作権法32条1項)には当たらない。
イ そして,本件全証拠によっても,本件画像の掲載について,その他の違法性25 阻却事由をうかがわせる事情は認められない。
⑸ 小括
以上によれば,本件発信者が本件ウェブページに本件画像を掲載したことにより,本件広告についての原告の著作権(複製権)が侵害されたことが明らかであるというべきである。