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著作権判例セレクション
【二次的著作物】写真を原著作物とする動画(映画)の二次的著作物性を認めた事例
▶令和5年2月6日東京地方裁判所[令和4(ワ)23392]
(注)「本件動画は、原告以外の第三者が撮影した加工前の元の各写真(「本件各元写真」)を、原告が選択し、動画制作アプリを使用して、動画の再生時間、再生速度を設定し、当該各写真が表示される時間や順番を決め、「Chapter2
of life」という文章を入力し、アニメーションのようにスライドして動きを付けて流れるように工夫して、作成したものである。」
(原告の主張)
1 争点1(著作物性)及び争点2(著作権者該当性)について
⑴ 証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件動画は、原告が、カメラマンに依頼して撮影してもらった本件各元写真の角度を調整した20 り、動画制作アプリ等を使用して肌の色をトーンアップしたりして制作したこと、本件動画に挿入された「Chapter2 of
life」との文字は、原告が筋痛性脳脊髄炎等によって寝たきりに近い状態から回復し、ミセス・グローバル・アース日本大会でグランプリを獲得するなどしてきた人生を振り返り、暗いトンネルの中から出て、未来に向かって歩いていくイメージを表すた25 めに、第2の人生の幕開けという意味で使用したこと、本件動画では、過去を振り返るというイメージのために残像を残したエフェクトを採用し、リスタートできたのは「あなた方がいてくれたから」という想いで「You
Are The Reason」という曲を流していること、以上の事実が認められる。
上記認定事実によれば、本件動画は、原告の人生を振り返り、未来に向かって歩んでゆく第2の人生の幕が開けたという想いが伝わるように、本件各元写5 真の角度や画質を調整し、字幕やエフェクトを用いるなど視覚的効果が生ずる方法を工夫するとともに、原告の想いに沿う曲を背景に添えるなど聴覚的効果が生ずる方法を工夫して、制作されたものであることが認められる。
そうすると、本件動画は、原告のリスタートという想いを的確に表現するために、視聴覚的効果が生ずる方法を工夫した点において、思想又は感情を創作的に表現したものであり、映画の著作物として著作物性を認めるのが相当である。そして、本件動画をスクリーンショットした本件画像についても、上記において説示した視覚的効果に係る工夫を踏まえると、著作物性を認めるのが相当である。
したがって、本件動画は、著作物である本件各元写真を映画化した二次的著作物に該当するものといえる。
また、上記認定のとおり、原告は、本件動画の視聴覚的効果が生ずる方法を自ら決めて本件動画を制作したことが認められることからすると、本件各元写真の著作権が第三者に帰属することを考慮しても、本件動画の著作権は、本件動画の全体的形成に創作的に寄与した者として、原告に帰属するものと認めるのが相当である。
⑵ これに対し、被告は、本件動画中の画像はありふれたもので、作成者の個性が現れたものとはいえない旨主張する。しかしながら、本件動画は、原告のリスタートという想いを的確に表現するために、視聴覚的効果が生ずる方法において工夫がされたものと認められることは、上記において説示したとおりであり、本件動画又は本件画像における上記工夫がありふれたものとはいえない。
したがって、被告の主張は、採用することができない。
また、被告は、本件動画が原告アカウントに投稿されたことは本件動画の著作権者が原告であることの裏付けにはならないから、本件動画の著作権者に係る客観的な証拠はなく、原告が著作権者であることは明らかではない旨主張する。しかしながら、原告は、本件動画の制作経緯等について、制作に使用した5 動画制作アプリ名をはじめ、本件動画が自らの人生を投影していることなども含めて具体的に陳述している上、本件ウェブサイト上の原告アカウントに投稿してから、これまでに原告以外の第三者が本件動画の著作権を主張している事情もうかがわれない。そうすると、被告の主張を十分考慮しても、原告の上記陳述は信用性が高いものといえるから、本件動画の著作権者は原告であると認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、採用することができない。