Kaneda Legal Service {top}

著作権判例セレクション

【著作物の定義】性的描写を含むオマージュ作品の著作物性を認めた事例

▶令和5630日東京地方裁判所[令和4()25601]
() 次の「原告の主張」部分参照:
『ア 本件原告文章の著作物性
原告は、令和3年に公開された映画「クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園」(以下「本件映画」という。)を参考にして、本件原告文章を作成した。具体的には、本件原告文章のうち、キャラクター名、舞台設定、「エリートポイント」との概念及び呼称、本件原告文章の末尾の台詞は、本件映画を参考にしている。また、一部の台詞は、TVアニメ「クレヨンしんちゃん」をオマージュしたものである。
 本件映画では、登場人物は5歳児で、舞台として生徒会室が登場せず、全年齢向けの映画作品であることから性描写は存在しない。これに対し、本件原告文章において、登場人物を中学生にしていること、舞台が生徒会室であること、登場人物が性行為を行っているとの設定や性行為の具体的内容のほか、個々の文章表現は全て原告が創作したものである。すなわち、本件原告文章は、本件映画のストーリー等を単に組み合わせるなどしたものではなく、作者である原告の考えや気持ちを具体的に表現しつつ、登場人物の振る舞いや感情の形容の仕方、叙述方法及び全体的な記述の順序・構成などにおいて、原告の個性が発揮されている。
したがって、本件原告文章は、原告の「思想又は感情を創作的に表現した」「言語の著作物」(著作権法2条1項1号、10条1項1号)に当たる。』

(1) 本件原告文章の著作物性について
弁論の全趣旨によれば、原告は、キャラクター名、舞台設定、「エリートポイント」との概念及び呼称並びに末尾の台詞について、本件映画を参考にして本件原告文章を作成したことが認められるものの、他方で、本件映画は全年齢を対象としたものと認められるから、その内容に性的な描写を含んでいないものと考えられる。
以上を前提に本件原告文章を検討すると、登場人物が性的行為を行っている状況を描写するものであって、その具体的な動作や会話の内容、感情の叙述のほか、全体的な記述の順序及び構成において工夫がされていると認めることができ、その表現には原告の個性が表れているといえる。
したがって、本件原告文章は、原告の「思想又は感情を創作的に表現したものであつて」「文芸」「の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)といえ、「言語の著作物」(同法10条1項1号)に当たるというべきである。