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著作権判例セレクション
【プログラム著作物】競馬の勝ち馬を数値を用いて予想する指数を算出するプログラムの著作物性を否定した事例
▶令和5年4月24日大阪地方裁判所[令和2(ワ)4948]
(注) 以下の「前提事実」参照:
〇 原告及び被告会社は、日本中央競馬会(JRA)が公開しているデータ等を基礎資料とし、所定の評価、調整等を加えた上計算することにより、競馬の勝ち馬を数値を用いて予想する「指数」を算出し、顧客に対し、インターネット上で、同指数を掲載した競馬新聞を提供している。原告では、当該指数をIDMと称し、被告会社ではハイブリッド指数と称している。
〇 IDMには、IDM予想値とIDM結果値とがある。IDM予想値とは、各出走馬の当該レース前の勝利指数の予想値であり、競馬新聞に掲載される指数である。IDM結果値とは、各出走馬について、レース後に実際のレース結果により算定・評価し直した勝利指数であり、蓄積されたIDM結果値が今後のレース予想の基礎資料として使用される。IDMは、当該馬の能力値(素点)に、観察者が馬自体の観察やレース内容、条件等の観察によって評価した種々の要素を加えた結果算出される数値である。
(1)
本件プログラム(IDM指数作成プログラム及び指数作成手法)について
著作権法上の「プログラム」は、「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」をいい(著作権法2条1項10号の2)、プログラムをプログラムの著作物(同法10条1項9号)として保護するためには、プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され、その作成者の個性が表れていること、すなわち、プログラムの具体的記述において、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり、それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れていることが必要であると解される。
本件についてこれをみるに、証拠及び弁論の全趣旨によれば、IDMは、●省略●そうすると、原告が創作性があると主張する、IDM構成要素の選択やその数値化等はプログラムの具体的記述の前提となるアイデアにすぎず、本件プログラムのうちプログラムの具体的記述に該当する部分は、単純な加減乗(除)の部分であるというべきであり、その指令の表現自体は上記アイデアと一体のものであって、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラムの全体に作成者の個性が表れているとはいえない。