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著作権判例セレクション
【言語著作物】株式投資情報(文書)の著作物性及び侵害性を認定した事例
▶令和5年4月10日東京地方裁判所[令和3(ワ)33726]
1 争点(権利侵害の明白性)について
(1)
証拠及び弁論の全趣旨によれば、本件各著作物は、いずれも、原告が、対象企業の業績、株価の見通し、買い推奨の理由等について、対象企業の財務状況、日経平均株価の動向等を踏まえ、自らの知識、経験、個性等に基づいて、個別具体的にコメントしたものと認められる。そうすると、本件各著作15 物は、いずれも原告の思想又は感情を創作的に表現したものといえる。
したがって、原告は、著作物である本件各著作物の著作者としてその著作権を有するものと認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
(2)
氏名不詳者は、ツイッターに、別紙投稿画面一覧 1 記載のとおり、本件各著作物をキャプチャした画像を使用した本件各投稿をそれぞれ投稿した。
このことから、氏名不詳者が本件各著作物を複製したこと及びこれを利用して作成した本件各投稿をツイッターに投稿することにより公衆送信したことは、いずれも明らかといってよい。したがって、本件各投稿の作成・投稿により原告が本件各著作物に係る著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたことは明らかと認められる。
(3)
以上より、本件各投稿による原告の権利侵害の明白性は認められる。
2 その他の要件について
(1)
前提事実によれば、被告は、上記権利侵害に係る「特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者」(法 5 条 1 項)に該当する。また、被告は、本件発信者情報をいずれも保有している。
(2)
弁論の全趣旨によれば、原告が氏名不詳者に対して著作権侵害を理由とする損害賠償請求権等を行使するためには、本件発信者情報の開示を受ける必要があると認められる。
したがって、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
(3)
本件発信者情報は、特定発信者情報以外の発信者情報に当たる。
3 まとめ
以上より、原告は、法 5 条 1 項に基づき、被告に対し、本件発信者情報の開示請求権を有する。