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著作権判例セレクション
【編集著作物】建築資材専用のファイリングシステム中の工事別分類項目表等の編集著作物性を認定した事例
▶平成7年10月17日東京高等裁判所[平成5(ネ)2747]
1 請求原因1項の事実のうち、控訴人らがJAMICシステムを開発したことは当事者間に争いがない。
そこで、JAMICシステムの具体的内容について検討するに、成立に争いのない(証拠)、原審における控訴人A本人尋問の結果及び弁論の全趣旨により成立の認められる(証拠)及び右控訴人A本人尋問の結果によれば、以下の事実を認めることができる。
(一)JAMICシステムとは、建築設計業務、施工業務の実施に必要な建材・設備資材のカタログ情報を整備して業者に提供することを目的とするシステムであって、建材・設備資材等のメーカーのカタログを収集し、別途に建築工事について分類項目表を作成し、他に五〇音別メーカーリスト、工事分類項目別メーカーリスト等を作成し、右カタログを右分類項目表に従って分類し、専用のボックスに整理保管し、随時資料の差替えを行っていくという建築資材専用のファイリングシステムである。
二)このために、控訴人らは、建材・設備資材メーカーからカタログを収集するとともに、建材・設備資材メーカーについて、会社名、製品名、電話番号、担当部課名等を記入した、五〇音別と工事分類項目別の二種類のマスターカードを作成している。
三)JAMICシステムの中核をなす工事別分類項目表の分類は、建設省大臣官房の標準仕様による工事別分類に材料別、建築用途別を加味したもので、いずれも通常建設工事で使用される用語を用いて、別紙(一)に示す如く、大項目に工事種別を配置し、中項目に大項目の工事種別をメーカーのカタログに即して細分化した項目を配置し、小項目に中項目の工事種別を材料、工法、部位等により更に詳細に細分化した項目を配置し、コンピューターデータベース化を容易にしたものである(実際のカタログは、中項目で分類してボックスに収納する)。
右分類項目表については、「JAMICシステム工事別分類項目表」として、平成4年10月22日控訴人らを著作者とする実名登録(文化庁の実名登録番号第一四二七六号の一)を受けた。
(四)工事分類項目別メーカーリストは、別紙(二)に示す如く、前記工事別分類項目表に従い、右工事分類の中項目別に五〇音順に企業名を分類し、会社名、電話番号、場合により担当部課名を記載したものである。
右工事分類項目別メーカーリストについては、「JAMICシステム工事分類項目別メーカーリスト」として、平成6年7月14日控訴人らを著作者とする実名登録(文化庁の実名登録番号第一四四三一号の一)を受けた。
(五)五〇音分類別メーカーリストは、会社名を五〇音順に並べ、そのカタログが収納されているボックス番号、工事分類項目中の該当項目を記載したものである。
(六)カタログは、ダンボール様の紙で作られた専用のファイルボックスに、工事分類項目に沿った大項目、中項目に分けて収納され、このボックスには、大項目、中項目のシールと分類ナンバーシールが貼付される。カタログにも、分類ナンバーシールが貼付される。
(七)このシステムにより、膨大な量の建材・設備資材のカタログ等を分類し、整理保管し、検索することが容易になり、これを主に設計事務所、建設会社等を対象に販売し、ボックス及びカタログを設置し、随時差替えを行ってメンテナンスを図っていく。
右事実を総合すれば、控訴人らが開発したJAMICシステムは、膨大な建材・設備資材のカタログを分類し、整理保管するシステムであり、全体として一つの法的な権利を構成するとはいえないものの、財産的価値を有するものとして取引の対象となり得るものということができる。
そして、既存の素材であっても、一定の方針あるいは目的のもとに、これを分類、選択、配列する行為に創作性があれば、これを編集著作物として著作権の保護が与えられるところ、右JAMICシステムのうち、控訴人らが著作権を有すると主張する工事別分類項目表及び工事分類項目別メーカーリストは、いずれも建築・資材設備に関するカタログの分類、保管、検索を容易にするという目的のもとに作成されたものであり、工事別分類項目表においては、前記(三)認定のとおり、工事項目を通常の建築用語を用いて、大項目、中項目、小項目とカタログの分類、保管、検索が容易であるように順次分類配置したものであって、工事項目の分類、選択、配列に創意と工夫が存するものと認められ、また、工事分類項目別メーカーリストにおいては、工事別分類項目表に従い、これと関連付けてカタログの検索が容易であるようにメーカー名を分類、配置したものであって、その分類、選択、配列にも創意と工夫が存するものと認められるから、著作権法12条に規定する編集著作物に当たるものである。
したがって、控訴人らは、工事別分類項目表及び工事分類項目別メーカーリストについて著作権を有するというべきである。