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著作権判例セレクション

【編集著作物】新聞中の1つの記事(座談会記事)の編集著作物性を認めた事例

▶令和4531日東京地方裁判所[令和3()4081]▶令和5426日知的財産高等裁判所[令和4()10080]
2 本件投稿 2 について
(1) 争点 4-1(本件座談会記事は原告を著作者とする編集著作物に当たるか)について
【ア】証拠によれば、原告の職員は、本件座談会記事の作成に当たり、会員の信心の深化や確立を図り、日蓮大聖人の仏法を基調に平和・文化・教育運動を推進するという原告の日刊機関紙としての性格や編集方針を踏まえつつ、原告の会員以外の読者がいることも念頭に置いて記事に掲載する素材を検討し、座談会の出席者の発言内容を記載した本文のほか、「座談会㉗ 皆が前進!皆が人材!」、「『青年の月』7 月を新たな決意で」、「わが地域の『立正安国』を!」、「10 日から『記念上映会』が開始」などの見出し、座談会の出席者 名の顔写真、九州南部の大雨被害を受けて救援物資の輸送に当たる会員らの姿を写した写真、記念上映会の会場となる会館を使用する際の注意事項リスト等を素材として選択した上で、全体の見やすさ等に配慮してそれらの配置を検討し、上記各見出しは記事の最上段や右上部等に分散させると共に、出席者らの上記顔写真は記事の左上部に、会員らの上記写真や上記注意事項リスト等は本文の内容に応じて本文中に埋め込むように、それぞれ配置したことが認められる。
これによれば、本件座談会記事は、その素材の【選択又は配列】について原告の思想又は感情が創作的に表現されているといえるから、著作権法上保護の対象となる編集著作物(著作権法 12 1 項)に当たる。
また、本件座談会記事は本件新聞の一部を構成するものであることに鑑みると、本件新聞の場合と同様に、原告は、その著作者として本件座談会記事に係る著作権を有すると認められる。これに反する被告の主張は採用できない。
【イ また、控訴人は、①本件座談会記事の「レイアウト及び段組」は、日刊新聞において日常的に見られるありふれたものであって、創作性が認められず、「見出し」についても、その位置及び大きさについて創作性は認められず、言語の著作物であるとしても創作性は認められない、②「レイアウト、段組、見出し等」に創作性が認められるという主張は、いわゆる「版面権」を保護すべきであるという主張に等しく、新聞の紙面の特定の記事のレイアウト、段組、見出し等の選択及び配列に創作性が認められることはないなどとして、本件座談会記事は、編集著作物に該当しない旨主張する。
しかしながら、前記アで説示したとおり、本件座談会記事が編集著作物に該当すると認められるのは、座談会の出席者の発言内容を記載した本文、見出し、座談会の出席者の顔写真、会員らの姿を写した写真、会館を使用する際の注意事項リスト等の素材の選択又は配列において被控訴人の思想又は感情が創作的に表現されているものと認められることによるものであり、「レイアウト、段組、見出し等」それ自体に創作性が認められることを理由とするものではない。
したがって、控訴人の上記主張は、その主張自体、前記アの認定を左右するものではないから、採用することができない。】