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著作権判例セレクション
【写真著作物】コスプレ写真の著作物性及び侵害性を認めた事例
▶平成30年10月26日東京地方裁判所[平成30(ワ)21931]
1 争点(1)(本件各写真の著作物性)について
証拠によれば,本件各写真は,いずれも有名な女性コスプレイヤーを被写体とするものであるが,本件写真1は,日中の屋外において身体を横向きにして視線をカメラに向けた被写体のバストアップの写真であり,被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光させるなどして撮影されたものであること,本件写真2は,屋内において身体を正面に向け視線をカメラに向けた被写体の上半身の写真であり,被写体の後方をぼやけさせ,フラッシュを発光させるなどして撮影されたものであることが認められる。このように,本件各写真は,絞りや陰影,構図やアングルなどを工夫して撮影されたものであるから,写真の著作物であると認められる。
被告は,本件各写真の独自性の大部分は被写体の姿にこそ認められるなどと主張して,本件各写真の著作物性を否定するが,本件各写真の撮影において上記のような創作性が認められるのであるから,採用することができない。
2 争点(2)(本件各写真の著作者)について
(1)
前記前提事実,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができる。
ア 原告は,平成30年1月頃以降,自ら又は代理人を通じ,被告に対し,原告が撮影した本件各写真の画像ファイルが本件ウェブページに無断で掲載されて原告の著作権が侵害されているとして,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき本件発信者情報を開示するよう書面や電子メールにより複数回請求したが,被告は,本件発信者が開示に同意しないことや,原告の権利が侵害されたことが明らかであると判断することは困難であることから,本件発信者情報を開示することはできない旨の回答をしていた。
イ 東京地方裁判所は,平成30年6月22日,原告の申立てに基づき,被告に対し,本件発信者情報の消去を禁ずる旨の仮処分決定をした。
ウ 「Flickr」の本件アカウントに係るページには,本件ウェブアルバムでの本件アカウント保有者の表示名が「A」であることが表示されているほか,支払方法として登録されたクレジットカード上の住所として原告の住所が表示されている。
エ 本件ウェブアルバムには,本件各写真を撮影したのがデジタルカメラ「Nikon
D610」であること,本件各写真の撮影日,絞りやシャッタースピードなどの本件各写真の撮影条件が掲載されているほか,「A」が平成30年1月に被告に対し発信者情報開示請求をしたことが記載されている。
(2)
前記(1)認定によれば,原告が,平成30年1月頃以降,自らが本件各写真を撮影した著作者であるとして被告に本件発信者情報の開示を求め,その消去禁止の仮処分決定を得るなど,原告が本件各写真の著作者として行動していること,また,「Flickr」の本件アカウントに係るページには原告の住所が表示されている上,本件ウェブアルバムには,被告に発信者情報の開示を求めた旨の上記原告の行動と合致する内容の記載もあることが認められる。これらの事実に加え,原告が,本件アカウントが原告のものであることに間違いない旨述べていること,本件各写真の撮影者(著作者)が原告以外の者であることをうかがわせる証拠は何もないことを総合考慮すれば,原告が本件各写真を撮影した著作者であると認めることができる。
(3)
被告は,仮に,本件ウェブアルバムに本件各写真を掲載したのが原告であったとしても,当然に原告がその撮影者であるとはいえないとの趣旨の主張をするが,本件各写真の撮影者が原告以外の者であることをうかがわせる証拠がないことは前記のとおりである。
3 以上のとおり,本件各写真の著作者は原告であると認められるところ,本件発信者による本件各写真の画像データの入手先が本件アルバム以外に考え難いことからすれば,本件発信者は,本件ウェブアルバムから本件各写真の画像ファイルを複製した上,本件ウェブページに掲載(アップロード)して,上記画像ファイルを送信可能化したものと認められる。また,本件ウェブページ上の記載からは誰が本件各写真の画像ファイルを掲載したのかが判然とせず,原告がいまだ被告から本件発信者情報の開示を受けていないことからすれば,原告において,本件各写真に係る著作権侵害に基づく損害賠償請求権の行使をするためには,本件発信者情報の開示が必要であると認められる。そして,本件ウェブページが被告の管理する特定電気通信設備により提供されていることからすれば,被告は,本件発信者による原告の著作権侵害行為に係る開示関係役務提供者であると認められる。
したがって,原告は,被告に対し,プロバイダ責任制限法4条1項に基づき,本件発信者情報の開示を求めることができる。
4 よって,原告の請求は理由があるから,これを認容することとして,主文のとおり判決する。