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著作権判例セレクション
【著作権の制限】法42条との関係でニュースの映像を録画したビデオテープの証拠採用に法令違反はないと認定した事例
▶昭和58年07月13日東京高等裁判所[昭和55(う)391]
(注) 以下の判示は、刑事裁判手続きのために司法警察員が作成した「テレビニュースの映像を録画したビデオテープ二巻及びその映像の一部を静止写真化したテレビニュース画面写真帳二冊」を原審が証拠として採用したことに対して、そのことが「番組製作者の著作権をも侵害する結果を招来している」のであるから原審には違法な採証があったなどという主張に対してなされたものである。
所論は、何人の、如何なる著作権法上の権利を侵害することになるのか明言するところがないが、テレビニユースのためのテレビフイルムが思想又は感情を創作的に表現した著作物に当たらないことは当然であるから(著作権法2条1項1号、10条)、これにつき著作者人格権及び著作権(同法17条1項)を認めるに由なく、著作隣接権としての放送事業者の権利(同法9条、98条ない100条)が問題となり得るのみである。放送事業者は、同法98条により、「その放送に係る音又は影像を録音し、録画し、又は写真その他これに類似する方法により複製する権利を専有する」ものとされているが、その権利は、同法102条、42条によつて制限され、「裁判手続のために必要と認められる場合(中略)には、その必要と認められる限度において、複製することができる」ものとされているのであつて、本件テレビニュースの映像を録画し、写真によつて複製したことは、右の「必要と認められる限度」をこえるものでないことはもとより、前記のように本件映像が既に広く公衆に直接受信されたものであること並びに複製の部数及び態様に照らし、同法42条ただし書所定の、放送事業者の「利益を不当に害することとなる場合」にも当たるものでないことは明らかである。従つて、本件ビデオテープ等の作成が、放送事業者の著作権法上の権利を侵害するものとは言い得ない。
(三) まとめ
叙上縷説のとおり、本件ビデオテープ及び写真帳は、その撮影対象及び収録、再生の過程から見て非供述証拠であり、かつ、要証事実との間に関連性の認められる、テレビニユースの映像の写しであつて、写し一般が証拠として許容されるための要件を充たしており、また、その取調べによつて報道機関ないし放送事業者の憲法上及び著作権法上の自由ないし権利を侵害するものとは認められないから、証拠能力を有する適法な証拠と解するのが相当であり、従つて、原審がこれを証拠として採用し、有罪認定の用に供したことに何ら訴訟手続の法令違反はない。