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著作権判例セレクション
【氏名表示権】氏名表示権侵害を否定した事例(動画から画像の切り出しが問題となった事例)
▶令和6年8月27日東京地方裁判所[令和5(ワ)70648]▶令和7年2月19日知的財産高等裁判所[令和6(ネ)10070]
(2)
本件動画に係る原告の著作者人格権(氏名表示権)及び本件動画に録画された実演に係る原告の実演家人格権(氏名表示権)が侵害されたことが明らかであるかについて
ア 前提事実のとおり、本件元画像の左上隅には本件表示が付されていたものの、本件サービスの機械的な処理により、本件画像は、左部及び右部がトリミングされた形となっており、これを閲覧する者において、直ちに本件表示を見ることができなくなっている。
イ そこで、前記アの事実をもって本件動画に係る原告の著作者人格権(氏名表示権)及び本件動画に録画された実演に係る原告の実演家人格権(氏名表示権)が侵害されたといえるか否かについて検討する。
まず、著作権法19条1項は、「著作権者は、…その著作物の公衆への提供」又は「提示に際し、その実名…を著作者名として表示…する権利を有する」と規定しているものの、同法は、その具体的な態様について、特段規定していない。実演家の氏名表示権についても同様である(同法90条5 の2参照)。
前記のとおり、前提事実によれば、本件投稿においては、本件記事に、施術「の様子を YouTube にアップ。」と記載されると共に、本件画像及び本件他の画像の合計3枚の画像が一体として投稿されている一方、本件画像が本件他の画像とは異なる動画から切り出されたものであることをうかがわせる記載等がないことが認められる。
そうすると、本件記事を閲覧した者は、本件画像及び本件他の画像の合計3枚の画像は、いずれもYouTubeにアップロードされた一つの動画から切り出されたものと理解するのが通常であるといえる。そして、前提事実のとおり、本件他の画像には、原告の氏名を表す本件表示がされている。
以上のとおり、著作権法は、著作物を公衆へ提供又は提示する際の氏名表示の具体的な態様について特段規定していないところ、一体として投稿された本件画像及び本件他の画像は、いずれも一つの動画から切り出されたものと理解されるのが通常であって、かつ、本件他の画像には、原告の氏名を表す本件表示がされているから、前記アの事実をもって、本件画像について著作者名及び実演家名である原告の氏名が表示されていないと認めることはできないというべきである。
ウ したがって、本件投稿により、本件動画に係る原告の著作者人格権(氏名表示権)及びその実演に係る実演家人格権(氏名表示権)が侵害されたとは認められない。
[控訴審同旨]