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著作権判例セレクション

【侵害とみなす行為】法11312号の意義と解釈

平成130621日東京高等裁判所[平成12()750]
(1) 被控訴人会社が被控訴人写真を,被控訴人カタログに掲載したことは,上述のとおりである。
上記カタログに掲載されている被控訴人写真が,控訴人の著作者人格権を侵害する行為によって作成されたものであることは,前述したとおりである。そうすると,上記カタログは,侵害行為によって作成された物であることが明らかであるから,控訴人は,侵害の停止又は予防に必要な措置の一つとして,上記カタログの発行及び頒布の中止を求めることができる。
なお,本件においては,控訴人が被控訴人会社に対し被控訴人カタログの頒布の中止を求めるためのものとして,著作権法113条1項2号に定める「情を知って」の要件が問題になることはあり得ないものというべきである。すなわち,著作権法113条1項2号は、著作者人格権侵害の行為等によって作成された物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する行為を全部権利侵害とすることには問題があるために、その場合に限って「情を知って」との要件を付加しているものと解すべきであり、被控訴人会社は、被控訴人写真を上記カタログに掲載して発行した当の本人であって、物がいったん流通過程に置かれた後に、それを更に転売・貸与する者ではないから、被控訴人会社の行為は、同法113条1項2号にいう「頒布」の問題として扱われるべき事柄ではないというべきである。被控訴人会社は、被控訴人写真を上記カタログに掲載して発行すること自体が許されなかったのであるから、その違法な行為によって自らが作成した物を自ら頒布することもまた許されないことは、むしろ自明である。すなわち、被控訴人写真を被控訴人カタログに掲載して発行及び頒布するという控訴人会社の一連の行為全体が、全部であれ一部であれ、同一性保持権侵害の行為に該当するというべきである。