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著作権判例セレクション
法19条2項の意義と解釈
▶令和6年8月1日東京地方裁判所[令和5(ワ)70422]▶令和7年1月30日知的財産高等裁判所[令和6(ネ)10065]
(1)
氏名表示権侵害の有無(争点 3-1)について
被告は、本件写真を利用した本件各動画をYouTubeに投稿に際し、原告Aの氏名等を著作者名として表示しなかった。このような被告の行為は、原告Aの氏名表示権(法19条1項)を侵害するものといえる。
これに対し、被告は、本件写真は様々な媒体で著作者名の表示のないままに利用されていたことをもって、原告Aがこのような利用を広く容認していたというべきである旨などを主張する。しかし、本件写真の利用にあたり著作者名の表示を要しない旨を原告Aが一般的・包括的に意思表示したなどの事情の存在はうかがわれない。また、著作者は、氏名表示権として、その実名等を著作者名として表示し、又は表示しないこととする権利を有するのであって、原告Aが被告以外の者による本件写真の利用に対し著作者名の表示を求めなかったことをもって、被告との関係においても不表示を容認していたものとみることは必ずしもできない。法19条2項に係る主張についても、少なくとも侵害者である被告がこれを主張することは相当でない。
その他被告が縷々指摘する事情を考慮しても、この点に関する被告の主張は採用できない。
[控訴審同旨]
争点3-1(氏名表示権侵害の有無)について
控訴人は、控訴人が本件写真の著作権又は著作者人格権を侵害していたとしても、それを理由に法19条2項の適用を排斥することはできないと主張するが、同項は、著作者の推定的意思を基礎として、著作物を利用する者の便宜を図った規定と解されるところ、少なくとも本件写真に無断の改変が加えられている本件において、同項の適用は前提を欠くというべきである。
また、控訴人は、被控訴人Yが、被控訴人社団やZ、Colaboが、本件写真を利用するに際し、被控訴人Yの氏名を表示していなくても問題としていない旨主張するが、本件写真の利用が予想される範囲の者であるからにすぎず、一律に氏名表示を要しない意思が示されているとはいえない。