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著作権判例セレクション

同一性保持権の侵害事例(写真著作物)

令和681日東京地方裁判所[令和5()70422]▶令和7130日知的財産高等裁判所[令和6()10065]
(2) 同一性保持権侵害の有無(争点 3-2)について
前提事実によれば、被告は、本件動画13につき、本件写真にモザイク処理を施したものをサムネイルとして利用したこと、本件動画935ただし、本件動画13及び31を除く。)については、サムネイルとして、本件写真の背景部分を切除すると共にE肖像部分もトリミングして利用したことが認められる。
また、被告は、本件動画132ただし、本件動画13及び31を除く。)及び35の動画(計31 )につき、本件写真の背景部分に文字列を付す、E肖像部分に吹き出しや文字列を付すなどの処理を施し、その後、このうちE肖像部分の顔部分に本件イラストを重ねる処理をしたことがそれぞれ認められる。
さらに、これらの改変が原告Aの意に反しないことをうかがわせる具体的な事情はない。
したがって、被告のこれらの行為は、いずれも原告Aの著作物である本件写真の構図やその内容を同人の意に反して改変したものであり、原告Aの同一性保持権(法20条)を侵害するものといえる。
これに対し、被告は、本件各動画において、本件写真は、被告によるモザイク処理や本件イラストを重ねる処理により、いずれもその表現上の本質的特徴を感得することができないものになっており、同一性保持権侵害は成立しない旨主張する。
しかし、被告による上記処理によっても、なお本件写真の表現上の本質的特徴部分であるE肖像部分の形式及び内容を覚知し得ることは前記2(1))のとおりである。
したがって、この点に関する被告の主張は採用できない。

[控訴審同旨]
争点3-2(同一性保持権侵害の有無)について
控訴人は、 Z肖像部分にモザイク処理や本件イラストを重ねる処理をしたものは、その表現上の本質的特徴を感得することができないものになっているから、同一性保持権を侵害しない旨主張するが、これを採用できないことは前記のとおりである。