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著作権判例セレクション
法113条11項の意義と解釈(同項を適用しなかった事例)
▶令和6年8月1日東京地方裁判所[令和5(ワ)70422]▶令和7年1月30日知的財産高等裁判所[令和6(ネ)10065]
(3)
名誉又は声望を害する方法による利用行為該当性(争点 3-3)について
原告Aは、被告による本件各動画における本件写真の利用につき、原告Aの名誉又は声望を害する方法による著作物の利用である旨を主張する。
しかし、著作権法113条11項が著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為を著作権人格権の侵害とみなす旨定めているのは、著作者の民法上の名誉権の保護とは別に、その著作物の利用行為という側面から、著作者の名誉又は声望を保つ権利を実質的に保護する趣旨による。このような趣旨に鑑みると、同項所定の著作者人格権侵害の成否は、他人の著作物の利用態様に着目して、当該著作物利用行為が、社会的に見て著作者の名誉又は声望を害するおそれがあると認められるような行為であるか否かによって決せられるべきである。
本件各動画における本件写真の利用に際し、本件写真の著作者が原告Aである旨の表示はされていない。また、原告社団やEないしColaboも、本件写真の利用に際しその著作者が原告Aであることは表示しておらず、本件写真の著作者が原告Aであることが一般に広く知られていることをうかがわせる具体的な事情も見当たらない。そうすると、たとえ被告による本件各動画での本件写真の利用態様等が原告Aの本件写真の創作意図に反するものであったとしても、当該利用行為は、社会的に見て、原告Aの本件写真に係る著作者としての名誉又は声望を害するおそれがあるものとは必ずしもいえない。
したがって、被告の行為は、著作者である原告Aの名誉又は声望を害する方法によりその著作物である本件写真を利用する行為とはいえず、これをもって原告Aの著作者人格権を侵害する行為とみなすことはできない。これに反する原告Aの主張は採用できない。
[控訴審同旨]