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著作権判例セレクション

法114条3項の意義と解釈

平成150226日東京地方裁判所[平成13()12339]▶平成161129日東京高等裁判所[平成15()1464]
[控訴審]
1審被告Bは,1審原告写真1は商業的利用を予定して撮影されたものではなく,有償で第三者に利用されることを予定していないから,1審原告には経済的損失が生じておらず,損害が発生していない,許諾料の相場は数万円程度であるからこれに準じた算定がされるべきであるなどと主張する。しかし,著作権法114条3項の「受けるべき金銭の額」は,著作権を侵害された者に対して最低限の賠償を保障する性質のものであって,著作権者が自ら著作物の商業的利用を予定しているか否かにかかわらず,当該著作物の使用について許諾をするとした場合の客観的に妥当な額を損害として認める趣旨のものと解されるから,商業的利用を予定していなかったから損害の発生がないということはできない。また,本件写真ビラにおいては,1審原告写真1を複製したものに吹き出しを付加するなど,撮影者の創作意図に反することを殊更に意図した形態で1審原告写真1が利用されているから,著作権者が受けるべき金銭の額は,常識的な範囲内の利用行為を想定して行われる通常の許諾の場合における金額と同一に論じることはできないというべきである。