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著作権判例セレクション

報道写真の侵害性を認定した事例

平成28427日東京地方裁判所[平成28()2419]
1 争点1(本件記事により原告の著作権〔複製権,公衆送信権〕又は著作者人格権〔氏名表示権〕が侵害されたことが明らかであるか)について
(1) 本件各写真の著作権者について
ア 本件各写真については,撮影者の思想及び感情が創作的に表現された写真の著作物(著作権法10条1項8号)に当たるものと認められる。
イ 本件雑誌に本件各写真が掲載されていること,本件雑誌において,本件写真1の右下脇に「PHOTO A」と,本件写真2の左下脇に「PHOTO B」と,それぞれ記載されていることは,当事者間に争いがない。
本件写真1は,本件雑誌の刊行により公衆へ提供されたものと認められるところ,本件雑誌において,本件写真1の右下脇に「PHOTO A」と,原告の氏名が表示されているのであるから,本件写真1の著作者(撮影者)は原告と推定され(著作権法14条),同推定を覆すに足りる証拠はない。
次に,本件写真2については,本件雑誌において本件写真2の左下脇に「PHOTO B」と記載されていることからすれば,本件写真2の著作者はBと推定される(著作権法14条)。しかるところ,Bは,本件写真2を撮影したのは原告であること,原告が本件写真2のネガを保有していることを認める旨の確認書を作成しており,また,原告は,本件写真2のネガを用いて本件写真目録を作成していることが認められ,以上を総合すると,本件写真2の著作者(撮影者)も,原告であると認めるのが相当である。
ウ そして,証拠によれば,原告は,本件各写真を撮影した当時,フリーカメラマンの立場にあったものと認められるから,本件各写真について職務著作(著作権法15条1項)が成立するものとは認められない。
したがって,原告は,本件各写真の著作者かつ著作権者であると認められる。
(2) 本件投稿写真が本件各写真の複製物であるかについて
ア 本件写真1は,枝葉のほとんど見られない樹木の上部に,日本航空123便墜落事故の犠牲者と覚しき人物の手腕や衣類等が残存していると思われる場面を背景に,ヘルメットを着用した捜索隊員と思われる人物が捜索活動等に従事している際の表情を撮影したものと認められるところ,本件投稿写真1は,本件写真1に比して若干鮮明さに欠ける部分はあるが,前述した本件写真1の特徴を細部にわたってそのまま再現しており,本件写真1との同一性を有するものと認められる。
また,本件写真2は,ヘルメットを着用した捜索隊員と思われる人物が,斜めに倒れた樹木に埋もれたがれき等を凝視する場面を撮影したものと認められるところ,本件投稿写真2は,本件写真2に比してやや周辺部分がトリミングされており,また,やや鮮明さを欠く部分があるが,前述の本件写真2の特徴を細部にわたってそのまま再現しており,本件写真2との同一性を有するものと認められる。
イ そして,本件各写真が本件雑誌に掲載されて公表されたことは当事者間に争いがないところ,本件各写真が日本航空123便墜落事故の事故現場で事故直後に撮影されたものであり,一般の人物において容易に同様の写真を撮影できるような性質の写真とは認め難いことなどからすれば,本件各投稿写真は,いずれも,本件雑誌に掲載された本件各写真に依拠して有形的に再製されたもの,すなわち,本件各写真の複製物であると認められる。
(3) 本件記事による著作権及び著作者人格権の侵害について
上記(2)のとおり,本件記事に掲載された本件各投稿写真は,いずれも本件各写真の複製物と認められるところ,本件記事は,原告の氏名を表示しておらず,また,本件記事は,インターネット上のウェブサイトである本件サイトに投稿されることにより,本件各投稿写真は自動公衆送信し得るようになっていたものと認められる。
したがって,本件投稿者が本件記事を本件サイトに投稿したことにより,原告の有する著作権(複製権,公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたことは,明らかであるといえる。