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著作権判例セレクション
プログラム著作権の譲渡契約の成立が否定された事例
▶令和2年11月16日東京地方裁判所[平成30(ワ)36168]▶令和3年5月17日知的財産高等裁判所[令和2(ネ)10065]
3 争点2(本件プログラムの著作権の譲渡)について
被告学園は,原告が,本件システムの開発当初から,被告学園に対し,同開発に係る成果物の著作権を譲渡することを承諾しており,平成25年5月23日に原告が被告学園に本件プログラムを引き渡し,被告学園が原告に対して開発費用を支払ったので,原告から被告学園に対して本件プログラムの著作権が譲渡されたと主張する。
しかし,原告は,本件システムの開発当初の平成25年1月の時点において,被告学園に対して本件システムの開発に係る成果物の著作権を譲渡する意向を示していたが(前記),その後,原告と被告学園との間で,本件システムの開発費用や著作権の取扱い等について話合いがされ,著作権譲渡契約書案が作成されたものの(前記),契約書が取り交わされるには至らず,交渉は決裂した(前記)。このような交渉経緯に鑑みると,同月の時点において,原告が本件プログラムの著作権を譲渡することを承諾していたと認めることはできない。
また,被告学園は,原告に対して開発費用として105万円を支払い,原告から本件システムを構成する本件プログラムに係る圧縮ファイル(本件圧縮ファイル)を受領したが(前記),その当時,本件システムは完成しておらず,本件プログラムは作成途中のものであり,原告がその時点で本件圧縮ファイルを送付したのは,Bの便宜のためにすぎない(前記)。そうすると,上記105万円は,原告が本件プログラムの開発作業に従事した労務の対価として支払われたものと考えるのが自然であって,これが本件プログラムの著作権の対価を含むと認めることはできない。
【なお,上記105万円は,本件プログラムが譲渡される際には,その譲渡代金の一部に充当されることが予定されていたと解する余地はあるとしても,上記のとおり,譲渡の合意が成立していたとは認められず,また,上記105万円が譲渡代金の全額であったとも認められない以上,その支払によって本件プログラムの譲渡契約が成立したと認める余地はない。】
以上によれば,原告が被告学園に対して本件プログラムの著作権を譲渡したとは認められないというべきであり,他にこれを認めるに足りる証拠はない。
したがって,被告学園の上記主張は理由がない。