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著作権Q&A
{Q} 映画の著作物の著作権は、すべて無条件に、映画製作者に移転するのですか?
A いいえ、違います。
著作権法には、映画製作の実態に配慮して、映画の著作物の著作権の帰属に関して特別の定め(29条)が用意されています。それによると、映画の著作物の著作権は、「その著作者が映画製作者に対し当該映画の製作に参加することを約束しているとき」は、その「映画製作者に帰属する」、と定めています(1項)。映画の著作物の著作権は、その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した著作者(16条、2条1項2号)のもとに発生するのですが、同時に、法律上何らの手続きを要することなく、その発生した著作権が「映画製作者」(注1)に移転することになるのです(注2)。その趣旨は、多くの人間がその創作(製作)に関与し、多大な投資を必要とすることが少なくない映画製作の実態において、映画の円滑な利用を促しつつ、映画製作への投資のインセンティブを確保することなどにあるといわれています。
(注1)「映画製作者」とは、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」を意味します(2条1項10号)。
(注2) もっとも、財産権としての「著作権」が自動的に映画製作者に移転することになっても、「著作者人格権」については「著作者」が享有したままです(映画製作者に移転しません)。
上述した条文の文言から明らかなように、映画の著作物の著作権は、すべて無条件に、映画製作者に帰属する(移転する)わけではありません。法29条1項が適用されるためには、映画の著作物の著作者(外部の映画監督など)が映画製作者に対し、「当該映画の著作物の製作に参加することを約束している」ことが条件となっているため、この参加契約がない場合には、本規定の適用はないことになるのです。