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著作権Q&A

{Q} 著作物を自由に利用することができる場合があると聞きました。本当ですか?

A はい、本当です。
著作権法の中には、「権利制限規定」と言って、一定の要件が整うと、例外的に、著作権者の許諾を得ずに著作物を自由に利用できる場合について、かなり多くの規定が置かれています(以下の一覧参照)
著作権は、他人の無断利用行為を排除して、著作権者だけに他人に著作物の利用行為の許諾を与える権限を独占させる、排他独占的権利です。そのため、著作権者の許諾を得ずに無断で著作物を利用する行為は著作権を侵害する行為となり、その行為に対して、著作権者は、差止請求や損害賠償請求といった法的措置を行使することが可能になります。
しかし、著作権者に強大な排他独占的権利を認めるだけで、著作物の一般大衆による一切の自由利用が制限されるならば、「文化的所産」である著作物の「公正な利用」を図ることはできず、著作権法がその究極的な目的に掲げる「文化の発展」に寄与することが難しくなります(1条参照)
そこで、著作権法は、「著作物の保護と利用のバランス」という観点から、著作権者の許諾を得ずに一般大衆が著作物を自由に利用できる一定の場合についての規定(権利制限規定)を設けているのです()
() 権利制限規定の適用を受けて著作物を自由に利用できる場合であっても、著作権者に対する「補償金の支払い」を条件としていたり(例えば、303項、332項など)、「出所の明示義務」(48)が課せられていたり、複製物の「目的外使用」が禁止されたり(49)と、自由利用の見返りにいろいろな制約がありますので、これらの制約にも十分に留意する必要があります。

<権利制限規定(著作物を自由に利用できる場合)(20235月現在)
〇 私的使用のための複製(30条)
〇 付随対象著作物の利用(30条の2
〇 検討の過程における利用(30条の3
〇 著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用(30条の4
〇 図書館等での複製・インターネット送信等(31条)
〇 引用・行政の広報資料等の転載(32条)
〇 教科書等への掲載(33条、33条の233条の3)
〇 学校教育番組の放送等やそのための複製(34条)
〇 学校その他の教育機関における複製・公衆送信等(35条)
〇 試験問題としての複製・公衆送信(36条)
〇 視覚障害者向けの著作物利用(37条)
〇 聴覚障害者等向けの「字幕」の作成等(37条の2
〇 非営利・無料の場合の著作物利用(38条)
〇 新聞の論説等の転載(39条)、政治上の演説、裁判での陳述の利用(401 項)、国等の機関での公開演説等の報道のための利用(402 項)
〇 時事の事件の報道のための利用(41条)
〇 立法・司法・行政のための内部資料としての複製(421項)
〇 特許審査、薬事に関する事項等の行政手続のための複製(422項)
〇 情報公開法等に基づく開示等のための利用(42条の2
〇 公文書管理法等に基づく保存・利用のための利用(42条の3
〇 国立国会図書館におけるインターネット資料・オンライン資料の収集・提供のための複製(431項)
〇 放送事業者等の一時的固定(44条)
〇 美術品等の展示(45条)、屋外設置の美術品、建築物の利用(46条)
〇 美術展における作品の解説・紹介のための利用等(47条)
〇 インターネット販売等での美術品等の画像掲載(47条の2
〇 プログラムの所有者による複製等(47条の3 〇 電子計算機における著作物の利用に付随する利用等(47条の447条の5)