{Q} 私的使用目的の複製は、自由にできると聞きました。どういうことですか?
A 「私的使用目的の複製」とは、著作権の制限規定の1つで、著作権法30条に規定されているものです。
まず、条文を見てみましょう:『著作権の目的となっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。』(30条1項柱書)
この規定は、著作物は、「私的使用」すなわち「個人的な又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内における使用」目的であれば、原則として、著作権者の許諾なしに、著作物を自由に複製できることを定めています。典型的には、後日自分で見るためにテレビ番組を録画しておく場合や、自分の趣味や勉強で使用するためにネットの記事などをダウンロードしたりプリントアウトしたりする場合に、この自由複製が認められます。
ここで、「個人的に」とは、自ら使用する場合のことであり、「これに準ずる限られた範囲内」とは、「家庭内」に準ずる、少人数で、かつ、お互いに個人的に強い結合関係のあるグループ間(例えば、きわめて親密な少人数の友人間や小研究のグループなど)を想定しています。この点、「これに準ずる限られた範囲」とは、「人数的には家庭内に準ずることから通常は4~5人程度であり、かつ、その間の関係は家庭内に準ずる親密かつ閉鎖的な関係を有することが必要とされる」(著作権審議会第5小委員会報告書S56)とする見解があります。例えば、家族で楽しむためにテレビ番組を録画したり、ごく少人数の親しい友人間で楽しむためにCDを録音したりする場合が、これに当たります。
「私的使用目的」による自由複製が認められるのは、上述の例のように、家庭内に準ずる閉鎖的な範囲内での使用目的がある場合に限られます。したがって、会社や研究機関などの団体で、従業員や研究員が業務上ないし研究上利用するために著作物を複製するような場合には、たとえそれが内部的な利用にとまるものであっても、「私的使用目的」に該当しないと解されます。
複製主体すなわち自由複製ができる者は、「その使用をする者」本人に限られます。したがって、例えば、私的使用目的としていても、自らコピーせず、コピー業者に依頼して行わせる複製まで許容するものではありません。もっとも、その複製行為が実質的に使用者本人の複製行為と同視できるような場合(例えば、親が自ら使用するために、その子どもに言いつけてコピーを取らせるような場合)まで禁止する趣旨ではないと解されます。