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著作権Q&A
{Q} 「上映権」とはどんな権利ですか?
A 上映権とは、著作権の1つで、著作物を、公に上映する権利のことです。
著作者は、その著作物を、公に上映する権利を専有します(22条の2)。「専有」というのは、他者を排して、自分だけが独占的に(権利を)有する、という意味です。つまり、上映権は、著作者が原始的に有する排他独占的権利です。
ここで、「上映」とは、「著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写すること」を意味します(2条1項17号)。「上映」という響き(語感)から、上映権は映画の著作物にだけかかわる権利だと思われがちですが、そうではありません。上述のように、著作権法上の「上映」とは、広く、「著作物を物に映写すること」を意味しています。対象のとなる著作物を「映画の著作物」に限定しているわけではなく、また、映写する物を映画館のスクリーン(映写幕)に限定しているわけでもありません。したがって、「上映権」は、美術の著作物や写真の著作物などいわゆる「静止画系」の著作物や、小説や詩などの言語の著作物にも認められる権利です。この点に注意してください。
「公に」というのは、著作権法では、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」という意味で統一して使われています。そして、「公衆」とは、不特定の者又は特定多数の者をいいます(2条5項参照)。つまり、家庭内やそれに準ずるごく限られた友人間におけるような「特定少数」に対する上映には、上映権は及びません。
例えば、フィルムに固定されている劇場用映画を公衆向けに(「公に」)映画館のスクリーンに映し出す行為、CD-ROMに収録されている美術作品や写真などを公衆向けに(「公に」)パソコンのディスプレイ上に映し出す行為、インターネットを通じて入手した(ダウンロードした)動画や静止画をいったんパソコン内のハードディスクに固定(記録保存)した後に、それらを公衆向けに(「公に」)パソコンのディスプレイ上に映し出す行為などは、原則として、上演権の侵害となります。
なお、著作物を物に映写する行為であっても、「公衆送信される著作物」を物に映写する行為については上映権は働かないため(かっこ書)、公衆送信される著作物、例えば、テレビ番組を受信装置(テレビ受像機など)を用いて公衆に映し出す行為に対しては、上映権は及びません(そのような行為に対しては、「公の伝達権」(23条2項)が働くことになります)。