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著作権Q&A

{Q} 「展示権」とはどんな権利ですか?

A 展示権とは、著作権の1つで、美術の著作物の原作品又は未発行の写真の著作物の原作品を、公に展示する権利のことです。
著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない(未発行の)写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有します(25)。「専有」というのは、他者を排して、自分だけが独占的に(権利を)有する、という意味です。つまり、展示権は、著作者が原始的に有する排他独占的権利です()
() 通常、絵画などの美術作品が売買されても、売主から買主へ移転するのは、有体物としての美術作品の「所有権」のみで、無体財産権である「著作権」は、譲渡契約が交わされていない限り、著作者(著作権者)が引き続き保有することになります。したがって、物(有体物)としての美術作品を購入しても、著作権者に無断で「展示」を行うことは原則としてできないことになるのですが、この間の調整を図るために規定が別に設けられています(45条参照)

展示権の目的となる著作物は、「美術の著作物」と「写真の著作物」だけです。これら以外の著作物、例えば、小説や詩集などの原作品の展示に展示権が及ぶことはありません。また、展示権が働くのは著作者の思想又は感情が最も忠実に表現された「原作品」の展示に限られる点に注意してください。複製物の展示には及びません。絵画や手彫りの彫刻など、通常、オリジナルが1(1作品)しか制作されないものについての「原作品」はまさにその1品ということになりますが、版画や写真の場合には、著作者がオリジナルであると考えて作成したもの(例えば、初回刷りのものをオリジナルとするなど)であれば、複数であってもすべて「原作品」として扱って差し支えないと解されています(ちなみに、版画のもとになっている版木、写真のネガフィルム自体は「原作品」ではありません)。そのため、通常は1品しか創作されない美術の著作物の原作品との均衡を考慮して、写真の著作物について展示権が及ぶのは、「まだ発行されていない」(未発行の)ものに限定されています(美術の著作物については、発行・未発行の別を問いません)。なお、「発行」については、解釈規定があります(3条参照)
「公に」というのは、著作権法では、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」という意味で統一して使われています。そして、「公衆」とは、不特定の者又は特定多数の者をいいます(25項参照)。つまり、家庭内やそれに準ずるごく限られた友人間におけるような「特定少数」に対する展示には、展示権は及びません。