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著作権Q&A
{Q} 日本国内で製作された映画の上映権をアメリカの配給会社に譲渡することは可能ですか?
A 可能です。
著作権は、その「一部」を譲渡することができるため(61条1項)、複製権や上映権といった、著作権を構成する個々の支分権ごとに譲渡することができます。この点は、アメリカにおいても同様です(下記(注)参照)。一方、地域的な個別譲渡(国ごとに分割して譲渡できるかの問題)については、著作権保護にかかわる最も重要な国際的枠組みである「ベルヌ条約」との関係で考える必要があります。ベルヌ体制の下では、著作権は、著作物を創作した時点で発生し(無方式主語, ベルヌ条約Art.5(2))、そのように発生した著作権の保護は、同盟国のそれぞれの「国内法」(domestic law)で規律する建前になっています(Art.5(3)参照)。つまり、各同盟国で発生した著作権はそれぞれ独立したものと解されるため、「国ごとに分割して譲渡」することには、その必要性を認めることができます。日米双方ともに、ベルヌ同盟国ですので、同条約が定める内国民待遇(Art.5(1))によって、「日本国内で製作された映画(の著作物)」の著作権は、アメリカでも保護されます。したがって、「日本国内で製作された映画の上映権をアメリカの配給会社に譲渡すること」が可能になります。
(注) アメリカ連邦著作権法においても、著作権は、その「全部」(in whole)又は「一部」(in par)を「移転」することができます(201条(d)(1))。この点は、上述したように、わが国と同じです。もっとも、「著作権の移転」(a transfer of copyright ownership)という用語については別に定義規定が設けられていて、それによると、著作権の「譲渡」(an assignment)は当然に含みますが、一方で、「独占的利用許諾」(an
exclusive license)も「著作権の移転」に含めています(「非独占的利用許諾」(a nonexclusive license)は「著作権の移転」に含めていません)。「独占的利用許諾」を「著作権の移転」に含めて扱っている点で、日本とは大きく異なりますので注意してください。加えて、アメリカにおいては、わが国とは異なり、「著作権の移転」に「著作権者の署名の入った書面」(an instrument in writing and signed by the copyright owner)が要求され、これがないと、著作権の移転は効力を生じないものとされています(204条(a))。この点も注意が必要です(わが国で著作権の移転(譲渡)が有効となるためには、「署名」はもちろんのこと、そもそも「書面化」すら要求されていません)。