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著作権Q&A
{Q} 旅館業を営んでいる者です。うちの旅館に宿泊されたことがある有名な作家さんから、先日、お礼のお手紙をいただきました。この手紙を旅館で展示したいと考えております。問題はありませんか?
A 少々注意しなければいけない点があります。
手紙の所有権は、その手紙を受け取ったあなたに移っていますが、その手紙(手紙は、一般的に著作物と考えられます。)の著作権まで譲渡されたことにはなりません。したがって、その手紙を、例えば、あなたの旅館のホームページに載せるには、その手紙の著作権者である作家の許諾を得る必要があります。一方、手紙の「展示」については、著作権の1つである「展示権」(25条)との関係が問題となります。この点、展示権は、「美術の著作物」と「未発行の写真の著作物」を公衆に展示する場合に認められる権利ですので、言語の著作物である手紙には、展示権は適用されません(しだがって、展示権の侵害には当たりません)。そうすると、手紙の展示は問題なさそうに思えますが、そうではありません。著作者人格権の1つである「公表権」(18条1項)との関係を考えなければなりません。公表権は「まだ公表されていない」(未公表)の著作物について認められる権利ですが、作家があなたの旅館に送った手紙が公に公表されていることはないでしょうから、手紙の展示には、公表権が働き、無断で展示すると、この公表権を侵害することになります。どうしても手紙を旅館で展示したいのであれば、作家の許諾を得ておくべきです。