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著作権Q&A
{Q} 非営利、無料かつ無報酬であれば、著作物を自由に演奏したり上映したりできると聞きました。もう少し詳しく教えてください。
A 承知しました。
著作権の制限規定のなかに「営利を目的としない上演等」という規定(38条)があり、その第1項で、「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。」
この規定によって、例えば、図書館活動の一環で子供たちを集めて本の朗読会(非営利、無料かつ無報酬の朗読会)を行う場合は、「口述権」(24条)が制限され、著作権者の許諾を得なくても自由に行うことができます。同じように、演劇脚本の作品を学校の文化祭で生徒たちが上演する場合(非営利、無料かつ無報酬の上演の場合)、「上演権」(22条) が制限され、著作権者の許諾を得なくても自由に行うことができます。また、学校の文化祭や運動会で市販のCDを使って音楽を流す場合(非営利、無料の演奏の場合※このケースでは、CD演奏の演奏者に報酬が支払われることは通常考えられないので無報酬の要件は事実上満たしている)、「演奏権」(22条) が制限され、著作権者の許諾を得なくても自由に行うことができます。
法38条1項に規定する自由な公の演奏等が認められるためには、具体的には。以下の4つの要件をすべて満たすものでなければなりません(いずれか1つでも要件を欠けば、本規定による自由利用は認められません)。
① 公表(4条参照)された著作物についての演奏等であること。
「公表」の概念については4条に詳しく規定されています。
② 営利を目的としないこと。
営利性については、公表著作物の利用行為そのものが直接的又は間接的に利用者(主催者等)の利益につながるか否かという観点から判断されるものと解されます。例えば、販促活動の一環として行われる無料上映会や無料演奏会、喫茶店やレストラン、バーにおけるBGM、さらには、工場内における作業効率向上のためのBGMなどは、いずれも営利を目的とする利用であると解されます。
③ 料金を受けないこと。
「料金」は、「入場料」・「入会金」・「会場費」・「受講料」等、その名義のいかんを問わず、著作物の提供又は提示に対する実質的な対価がすべて含まれます。例えば、入場自体は無料であっても、当該演奏会に入場できる者はあらかじめ「会費」や「寄付金」を支払っている会員のみに限定される場合には、「料金を受けていない」とは言えません。
④ 実演家又は口述者に報酬が支払われないこと。
「報酬」は、「出演料」や「ご祝儀」等、その名目のいかんを問わないものと解されます。例えば、「車代」や「弁当代」等の名目で支払われるものであっても、実費を越えて、実質的に実演や口述を行うことに対する反対給付と捉えられる場合にはなお「報酬」に該当するものと解されます。
なお、以上は、実演や口述が「生(ライブ)」で行われる場合の話であり、実演や口述が録音物又は録画物の再生によって行われる場合に(2条7項参照)、その録音又は録画の際に当該実演家又は口述を行う者に報酬が支払われていたとしても、本規定に言う「報酬が支払われる場合」には当たりません。