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著作権Q&A
{Q} アナログ形式の著作物をデジタル化したり、リマスター版を製作した者に著作権は与えられるのですか?
A デジタル化したり、リマスター版を製作しただけの者に、著作権が与えられることはありせん。
アナログ形式の著作物をデジタル化したり、リマスター版を製作する者は、「著作者」すなわち「著作物を創作する者」(2条1項2号)には当たらず、したがって、彼らに著作権が原始的に帰属することはありません。なぜなら、アナログ形式の著作物をデジタル化したり、リマスター版を製作することは、オリジナルの作品を単に「複製」したに過ぎないものと考えられ、そこに何ら新たな創作性が加わっているとは言えないと解されるからです。この点、裁判例の中には、「既存の著作物に依拠し,その表現上の本質的な特徴の同一性のあるものを作成する行為のうち,新たな思想又は感情の創作的な表現が加えられていない場合は,複製に当たる」(平成17年04月28日大阪高等裁判所[平成16(ネ)3684])とか、「既存の著作物につき,その表現上の本質的な特徴を損なわない限度において,具体的表現に修正,増減,変更等の改変を加えた場合,当該改変により,思想又は感情の創作的な表現が新たに加わり,二次的著作物が創作されるに至っていなければ,それは既存の著作物からの改変があったとしても,「複製」(著作権法2条1項15号)であると評価される」(平成28年6月27日知的財産高等裁判所[平成28(ネ)10005])と判示したものがあります。
なお、以下の判例も参照してください:
▶「ところで,著作権法96条は,「レコード製作者は,そのレコードを複製する権利を専有する。」と定めているところ,ある固定された音を加工する場合であっても,加工された音が元の音を識別し得るものである限り,なお元の音と同一性を有する音として,元の音の「複製」であるにとどまり,加工後の音が,別個の音として,元の音とは別個のレコード製作者の権利の対象となるものではないと解される。」(平成30年4月19日大阪地方裁判所[平成29(ワ)781])
▶「音楽の著作物を演奏し,その演奏を録音した音楽CDは当該音楽の著作物の複製物である(法2条1項15号,同13号)。また,音楽CDをMP3形式へ変換する行為は,聴覚上の音質の劣化を抑えつつ,デジタル信号のデータ量を圧縮するものであり,変換された音楽CDと変換したMP3形式との間には,内容において実質的な同一性が認められるから,レコードの複製行為ということができる。したがって,音楽CDをMP3形式で複製することは,同音楽CDに複製された音楽の著作物の複製行為である。」(平成15年1月29日東京地方裁判所[平成14(ワ)4237](中間判決))